第47話 試行錯誤
破壊された扉を修復する。
石を混ぜて、頑丈に仕上げる。
これで、蹴り飛ばされることはない。
「さて、終わったことだし札作りに戻るかな」
楽に終わって良かった。
考えているほどの強い相手ではなかった。
今までが考え過ぎだった可能性も否めない。
あの老人が例外過ぎたとか。
……魔法揃えておかないとなぁ
僕は、彼ら騎士を逃がした。
間違いなく上に報告される。
なら次来るのは、彼らよりは強い存在かあるいは騎士の大軍だろう。
少し強い程度なら多分問題ない。
僕は大きな被害を出していないから王国最強とか、龍殺しとか、やばそうな人は居てもまだ引っ張り出したりはしないだろう。
そうなると問題となるのは大軍の方、大軍だと一人一人が弱いとしても数で押される。
それはとても厄介。
札作りを再開する。
とりあえず、襲撃前に作った治療系の魔法の札の数を増やしていく。
今回は治療魔法を使わなかったけど、次も使わずに済むとは限らない。
今のうちに予備も合わせて作っておく
時間をかけて作りながら新しい魔法も考える
もしも、大軍が来たとしても、対処できるように準備を進めていく。
シクに教わりながら、魔法の種類を決める。
大軍なら、編成に時間がかかる。
今のうちから開発に取り掛かれば、来る時には間に合うかもしれない。
……大軍用となると広範囲に影響を及ぼす魔法か。広範囲殲滅魔法とか?
「広範囲殲滅魔法ってどう? 攻撃」
「殲滅?」
「範囲内に居る敵まとめてぶっ倒すみたいな?」
「魔力の消費が多い、陣ならば数と準備が要る」
「詠唱なら?」
「長文詠唱と魔力の制御、今の主では無理」
「だよね……どうしようかな」
「範囲拡大の代わりに効果を薄める、陣を事前にばら撒く、物質陣で補う。複合で分散」
「なるほど」
……効果を薄めても影響が出せるもの……煙幕良いかもしれないな
妨害で考えていた煙幕。
同じく考えていた拘束の場合、大軍相手だとその数分を展開する必要がある。
そうなると、今の僕には難しい。
しかし、煙幕なら相手の数は関係なく範囲指定で効果を発揮できる。
その上、効果を弱めても充分に利用ができる。
「範囲拡張の代わりに効果は弱めるかな」
試行錯誤を繰り返す。
時間がどんどんと過ぎていく。
魔法制作だけでなく、筋トレや能力の練度上げも続けている。
スケジュールを決めて、午前中に鍛錬を行い午後に魔法作成を行っている。
果実などが足りなくなったら都度補充。
早朝に、起きてさっさと朝の支度を済ませる。
動く際は無貌をスポーツウェアの形に変えて、運動を開始する。
脱げないようにしっかりと、肌に合うようにピッタリと作る。
まずは、普通の筋トレと準備運動を行う。
準備運動をしないと身体を痛めてしまう。
それだと鍛錬の意味がない。
「規定数終わってる」
「おっ、なら次はゴーレムで戦闘訓練かな」
2体のゴーレムとの戦いを、繰り広げる。
2体は、纏まらずにバラバラに動いてそれぞれ攻撃を仕掛けてくる。
動きもタイミングもバラバラ。
気を抜いたら、不意をつかれてしまう。
攻撃を避け反撃、攻撃に合わせて鋭く拳を打ち込む。
繰り返していて、少しは上達した気がする。
腕に横から軽く拳を当てて、攻撃を逸らす。
……札はあるから試してみようかな
一度、正面からゴーレムの攻撃を受けようと考える。
今までずっと避けていた。
せっかく治療用の魔法も制作したことだから、試すのは良い。
無防備で受けるのは怖いので、しっかりと腕でガードの構えを取る。
龍形態のように硬いウロコはないから、多分龍の姿よりも防御力は低い。
ゴーレムは拳を振るう。
「うおっ……」
受けた瞬間に、衝撃が電気のように腕に走って体勢をわずかに崩す。
思っていたよりも、衝撃が大きかった。
「痛くはないけどピリピリするなぁ」
内部にまで届いたことで、少しピリピリと痺れる。
想像より強い一撃だった。
僕は、ゴーレムを舐めていたようだ。
認識を改めた方が良さそう。
真正面からまともに受けるのは危ないと分かった。
次の攻撃を避けて、胴体を打ち抜く。
「うーん、これからはガード練習もしようかな」
1日に2回、ゴーレムの攻撃を防ぐ。
やはり、戦いなら攻撃を防ぐガードも、上手くなった方が良いだろう。
防御の能力はあるけれど、人型だと今のところ一度に1つしか能力を使えない。
もっとも切り替えるのはすぐに可能だから心配はないけれど、もし切り替えが間に合わない場面が起きた時に、ガードの練習をしておけば攻撃を防げる。
「魔法制作の時間」
「もうそんな時間か。今日こそ完成させたい」
「急くな」
「出来れば他の魔法も作りたいんだよ。いつ襲撃来るか分からないし」
しばしの平和な日常を繰り返す。