第45話 魔法制作
魔法にある法則に則って、魔法を制作する。
教わった物を、ひとつずつ順番に進めていく。
焦らず省略せず一つ一つを正確に作っていく。
……治療なら変換はエネルギー体、効果は自身及び対象者、効果は自然治癒拡張、範囲は全体かな。式は……詠唱か……いや陣にしよう
指先に魔力を込める。
作っておいた木の札に、魔力で円を描く。
木の札に円状の魔力が刻まれた。
その後、中に使いたい魔法に、必要な文字や模様を魔力で描いていく。
あえて、文字を崩して雑に書いた。
そして、全体に魔力を通す。
……これで一応発動が可能なはず
「どう?」
「できた、これならどう?」
シクに、書いた木の札を見せる。
しっかりできてるか、僕では分からない。
シクは受け取り、なにやら確認をしている。
「発動不可」
「何処か違った?」
「込める魔力が少ない、発動に足りない。込める魔力にバラツキがある、不発か暴発が起きる。順番が違う」
一つ一つ丁寧に間違いを指摘される。
しっかり作ったつもりだったけど、まだ作りが甘かったようだ。
順番を間違えているようなので、新しい木の札を用意してまた作る。
ダメ出しを食らう度に、修正して作り直す。
同じ作業を何度も繰り返す。
魔力の込め方は繊細、丁寧に集中して行う。
「ふむ、これであれば使える」
「ようやく完成した……疲れたぁ」
何とか魔法を作ることが出来た。
失敗して大量の木の札を無駄にしたけれど、何とか完成に漕ぎ着けた。
後は、同じ物を量産する。
作った物は、治療系の魔法。
効果は使ってみないと分からないけれど、今は1つしかないからしまっておく。
「実践は?」
「試しては見たいけど何枚か作れたらかな」
「なるほど、何枚作る予定?」
「とりあえず……3枚くらいかな。そのくらいあればひとまず安心かな」
「そうか」
「これも使う機会がなければいいんだけどね。本当に戦いたくは……」
「どうした?」
「ゴーレムに反応があった。誰かが来た」
小屋の前に、待機させたゴーレムが反応を見せた。
誰かが来た。
それも、フィリスさんや商人ではない誰か。
ここは山だからただの登山客の可能性はある。
……いや、ないか
こんなところに、登山しに来るとは思えない。
数や姿は、ゴーレム越しで確認はできない。
扉に近づいて、聞き耳を立てる。
ガチャガチャ、と音が鳴っている。
それも1つじゃない。複数。
……鎧かな。複数人、もしかして討伐隊?
討伐隊が来る、その可能性はある。
僕は、既に2回ほど人を迎え撃った。
それに2回目の老人は、ここに龍が住んでいることを知っていた。
老人は死んでいないだろうけど、敗北している。
なら、僕のことを危険な邪龍と看做して、別の誰かが殺しに来てもおかしくない。
「人か」
「多分討伐隊かな。僕相手に来たってことは老人以上の実力者か」
実力者で間違いない彼が倒されたことを知っていて、挑みに来ているのなら強いメンバーを集めているのだろうと、予想ができる。
「どうする?」
「去ってくれればいいけど戦闘かなぁ。噂をすればってやつかぁ」
早速、魔法を使う機会が訪れた可能性がある。
小屋の中に隠れて、様子を窺う。
不在と考え、立ち去ってくれるかもしれない。
静かに待機する。
「ゴーレムの小屋? なんだここは」
「ゴーレムの置物のようですね。こんな場所になぜこのような物が」
「龍はもっと奥地か?」
「いえ、奥は神狼族のナワバリです。いるのならこの付近だと思われます」
「ならまさか! この小屋は龍が作ったのか?」
「その可能性はあるな」
扉がノックされる。
扉を蹴り飛ばしたりしないようだ、良かった。
当然ながら、居留守を使う。
バレると怖いので、静かに扉から離れておく。
後方からバキッ、と音がした。
何かと思い顔を上げる。
吹き飛ばされた木片が壁に当たり、床を転がった。
前言撤回、相手は扉を蹴り飛ばすような輩だった。
「どいつもこいつもなんで小屋に攻撃するのかなぁ」
飛竜の時と言い、小屋が無駄に被害受けるのは納得行かない。
身勝手で腹立たしい。
「隠れていたか。邪龍め我ら騎士が討ば……」
僕は扉を蹴り壊したであろう奴を、蹴り飛ばした。
なにやら話していたけれど、どうでもいい。
そんなものを聞く気はない。
これ以上は、この小屋を壊されたくないので小屋の外に出る。
ここからは、戦いになる。
相手はおそらくは強い、加減は難しいだろう。
「た、隊長!」
「小屋に隠れていたのか、卑怯な」
「貴様ァ!」
「ゴーレム、小屋を守って」
ゴーレムに命令を下して、彼らの前に立つ。