第41話 新しい服
「この湖付近は自由に使え。引き続き監視は置くが邪魔にならないように伝えておく」
「わ、分かった」
「我の用事も済んだ、帰る」
フィリスさんは、そう言い小屋の扉を開け立ち去る。
「……取り敢えず……山の外行かなくて済むってことか。良かった」
目的地も分からず、人里を避けて彷徨うことにならずに済んで良かった。
どんな話があったのか、気になるところだけど、言っていない辺り2人にとっての重要な話なのだろう。
僕は提示された約束と契約を守るだけ、それ以上はしない。裏に思惑があったとしても、僕は触れない。
「さて、どうしようかな」
今までは、山の外に出る為の準備をしていた。
でも、出ていく必要が無くなったから、次は定住するための準備を進めるべきだろう。
出ていく予定だったから、何も考えていない。
ちょうど、衣食住は揃った。
衣服は取引で、手に入れた遺物無貌がある。
……あっ、そうだ。服着替えよ
葉っぱで作った服を脱いで、無貌で服を作る。
とりあえず、いくつか思いついた中から良さそうな服を選択する。
現代風の中性的などちらが着ても、違和感が少ない衣装にした。
今の僕に女性ものを着る勇気はない、かと言って、男性ものも如何な物かと思ってしまった。
現代日本風の為、こちらの世界ではすごい目立つ格好かもしれないけど、特に人里に行く予定はないので支障はない。
そもそも、僕はこちらの基本的な服装について何も知らない。
……あっ、下着も作らないとな。やっぱり違和感ある
下着の形も作る。
今までに着ていた服の下には、下着を付けていなかったのだ。
最初に関しては着ている物が、ボロボロの布だけだったから下着なんて贅沢な物はなかった。
葉っぱの服の際は、ショートパンツ型だったのと作るのが面倒だと思っていたから、作っていなかった。
ただ、付けていないと変な感覚がある。
……ようやくまともな服を着れた……
長年の夢を叶えた、と思うほどの感動モノ。
ようやく、まともな服を着れた。
今まではボロボロの服(ほぼ布)と、雑に葉っぱで作った服だったから嬉しい。
食は保存食を仲間に加えて、戦力増強ができた。
保存食は長期移動以外でもありがたい、少し遠出する際の携帯食としても使える。
特に干し肉、この山にはオオカミと人しか居ないのか、肉を食べれていなかった。
果実以外に魚も食べていたけれど、やはり肉も偶には食べたい。
最後の住は、今使っている改良済みの小屋。
浴槽を新しく作った事で、少し大きくなった。
山の外に出るなら、手放さなければならなかったけど、その話がなくなったから思いつき次第、どんどん改良を加えていく予定。
「家の中をもう少し物増やしたいなぁ。何かあるかな」
今、必要な物を考える。
今までに作った物で残っているのは
木の箱、石の箱、石のナイフと木のまな板、石の水筒、木の椅子、浴槽。
これらで、この山で生きる分には事足りた。
強いて言うなら、切れ味が心配な石のナイフ、魚を捌くには物足りない。
ただ、サバイバル用道具としてナイフを買ったので問題はなくなった。
これからは生きるのに必要な物だけではなく、生活水準を高めていく。
……他に必要な物は寝床かな……いや、寝具買ったからいいか。羊毛、羽毛系の材料は無いし
布団やベットを作るには、材料が足りない。
羊毛や羽毛は、そもそもそれを保有した動物の姿を見掛けていない。
その上、寝具は商人から購入した。まだ使っていないから、使い心地を確認してから考えよう。
……他には……あっ、来客用の物欲しいな
この小屋には、フィリスさんや商人の男性が来る。
この2人は関係が続く相手、出来れば来た時に良い対応をしたい。
生活に必要な物ではなく、来客時にあると良い物に思考を変えて考える。
……椅子は2つ、一応3つあった方がいいかな。後は机も欲しい
ゴーレムに木を運んでもらい椅子を作る。
待機中、会話中座る物があれば楽。
作ってある2つの椅子を崩して作り直す。
作ってある椅子はその場しのぎで作った簡易な物、来客用なら新しくしっかりと作りたい。
形や耐久性、座り心地を自分で試して、試行錯誤を繰り返す。
「深すぎるな……逆に負担かかりそう。これだと高い」
「そんなもの、座れたら良かろう」
「僕だけそうしたんだけどね、僕以外が座るなら良い物の方がいい……あっ、君も座る?」
自分用だけなら、言う通り座れる物で良い。
他人が座るから気をつけてる。
「あるなら」
「了解、なら4つにするかな」
時間をかけて作る。
干し肉を軽く炙って1つ食べて、椅子の制作を続ける。
干し肉はそこそこ硬いけど、余裕で噛める。
龍は顎の力も強いのかもしれない。
噛めば噛むほど、肉の味が染み出してくる。
久しぶりの肉の味だ。懐かしさもある。
今まで干し肉を食べる機会はなかったけど、中々に美味しい。
手に入って良かった。
保存が効くから、次は多めに買おう。
それからしばらくして椅子を作り終えた、1つ作れば後はその形を作るだけ。
「よし、完成」
4つの椅子が完成して、椅子の高さに合わせた机もしっかり制作した。
来客時に必要な道具を考えて制作していく。