第4話 衣食住
岩に座った後、休憩がてらに僕は考え始める。
これからどうするかを考える必要がある。
とりあえずの目的にしていた人里に向かうのは、リスクが高そうに感じる。
「うーん、人里は難しいか」
彼らの反応からして僕の種族は、人とは友好的な存在ではない。
人に狙われ狩られる立場
大抵の相手であれば迎撃は可能。だけど、余り戦いはしたくない。
そもそも、彼らに何が目的があって襲われたか分からない。人ではないからだけなのか、それ以外にも何かしらの理由があるのか。
聞こうにも、あれでは対話は困難を極める。
他の人が全員そうだとは思わない。けれど、そうではないとは断言できない。
高いリスクを踏むのは避けたい。
だから、僕は当初の目的としていた人里に向かうは、中止と判断する。
……この場合次の目的は同族探しがいいのかな
同族、同じ種族の生物が居てもおかしくはない。
僕のように人に擬態ができるのなら、コミュニケーションも取れるはず。
あの4人組の話した言葉は、日本語に極めて近い言語だと思われる。
ならほぼ支障はなく、会話が可能だと思う。
同じ種族の誰かに接触できれば、協力を得られる可能性はある。
「いや、それは難しいか」
僕はこの種族について何も知らない。
同族がどこに住んでいるのか、この種族の習性はどのようなものがあるのかなど。
同族を見つけ出せる自信もない。
この森に僕以外にも居るとしても、今の状態だと手がかりなしでさまようことになる。
「……人里は諦めて同族探しも難しそう。仕方ない。ひとまず暮らせる場所を探そう。この付近に食料となるものがあればいいけど」
ひとまず生活ができる場所を見つけたい。
衣食住、衣は後回しとして食と住。
……最優先は食、水と食べ物
食事がなければ、生物は死ぬ。
食べ物の方はどのくらいか分からないけれど、水がなければすぐに死ぬ。
現状脳裏に浮かぶ死因は餓死、飢えて死ぬ。
飢えないためには、動ける体力がある今のうちに、見つけないとならない。
動けなくなったら、更に見つける事が難しくなる。
そうなると、時間は少ない。
思考を巡らせる。
生きるために、最善に近い行動を取る必要がある。
「食料……森だから植物かな」
草木が生えている。
草も木も1種類でなく、様々な種類だ。
おそらく探してみれば、果実や食べられる植物が何種類か見つかる。
よく見れば、木の枝から小さな果実のようなものが生っているのが見えた。
食料候補発見!
「結構な量、これが食べられればひとまずは食料の確保は大丈夫かな。一応、他にも何種類か見つけて確保しておこう」
歩いて、木々に生っている果実を確認する。
数分で数種類見つけて、少しだけ回収をした。
この森は、果実が豊富なようだ。
とりあえず、食べないで手で持って歩く。
「食べ物はOK、次は水場」
耳を澄ませる。
しかし、水音はしない
この付近には、無いのだろう。
西側に向かって歩き出す。
先程走った時に、水場は確認できなかった。
だから他の方角に、向かうことにした。
その間にも、しっかりと周囲を見渡して、果実や食べられそうなものを探す。
そこら辺に生えている草も確認する。
……草は見ても分からない。最悪、毒がなければ食べるつもりだけど……
毒に対する知識を、僕は余り持ち合わせていない。
有名どころの毒について少し知っている程度で、正直当てにはならない。
異世界となると尚の事、役に立たなそうだ。
しばらく歩いていると前方から音が聞こえた。
聞き間違いでなければ、水が流れている音だ。
……川、いや、この音は滝かな。ならちょうどいい、魚居たりしないかな
水場なら、魚のようなそこに住む生物が居ても、おかしくない。
魚なら焼いて食べられる。
運のいいことに炎は、自分で用意ができる。
音のする方向へ向かっていく。
進む度に音が大きくなり、さらに進むと木々の隙間から滝が見えた。
数メートル上から大量の水が下の小さな湖に落ちて、水飛沫が飛び散っている。
……滝なんて久しぶりに見た。大迫力
森の北側には、大きな崖があったようだ。
湖の水は綺麗な透き通った水だ。
水の中を覗くと、魚らしき生物が泳いでいるのも確認ができた。
「あの魚、食べられそう。頑張れば素手で取れるかな」
……これで水場も確保、次は住だけど雨風しのげる場所がいいな。水場を中心に探してみるかな
食に関するものは、見つけ終えた。
水場を中心に歩いて洞窟を探す。