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第31話 ナイフの試し斬り

「それはどこに!?」


 僕はすぐに、その言葉に食いつく。

 似たようなもの、つまり同じものではないけれど、服に関する遺物なのだろう。

 欲しい。


「今どこにあるかは分からない」

「そ、そうなんだ」

「それはあるにんげ……いや、商人が保有している」


 なぜ言いかけて訂正したのだろう? 少し気になるけれど、それはどうでもいい。

 相手が人間でも、商人という種族でも、こちらとしては構わない。

 それよりも重要なことは……その道具を商人が持っているということ。

 そして、商人が持っているという事を、彼女が僕に話したこと。

 ならば、その遺物は売り物である可能性が高い。


「商人が……売ってるってこと?」

「そうだ。そしてその商人は2ヶ月に1度この山に来る。予定通りなら数日中に来るはずだ」

「その時がチャンス……」

「あぁ、そうだ」


 ……確かにチャンスなんだけど……


 売り物ならば商人から買えばいい、数日中に来るというのは、朗報だ。

 問題は今、金を持っていない無一文という事だ。

 そして、更に困った事に金銭に関するものを、何一つ持っていない。

 この状態で商人が来ても、金を持っていないから遺物を買えない。

 金になるような物も特に持っていない。

 でも、今回を逃したら次は2ヶ月後になる。


「ちなみにいくら位とか分かる?」

「値は聞いたことないが並の冒険者の稼ぎでは人生かけても買えない程度の額とは言っていたな」


 ……あっ、今から大急ぎで集めたとしても買えなそう……くそぉ


 並の冒険者の収入がどのくらいかは、分からないけれど、人生かけても買えない程となると相当の金額だと考えられる。

 何かしら金を集められる手立てを持っていたとしても、それは不可能に近い。

 金を借りるための人脈もない。


「お金になりそうなもの……」


 ……飛竜のウロコこの辺に落ちてないかな? ファンタジー的に龍のウロコは高く売れる印象が強いけど


 飛竜との戦闘後も小屋の周辺で活動していたけど、ウロコが落ちていたという記憶はない。

 見逃していた可能性がある、投げ飛ばしたところを後で確認しに行こう。


「何かないのか?」

「特には思いつかないかな」


 何が売れて何が売れないのか、分からない。

 売れる物とは、つまり取引する相手に需要のある物、こちらに来てろくに人と関わっていない僕が分かるわけがない。


「……青淵石の原石があったな。あの量なら高く売れるぞ。遺物分に届くかは分からないが」

「原石、あの岩か。あの原石が売れる……それならこれは売れるかな?」

「これ?」


 トコトコと箱の元に行き箱を持ってくる。そして、ナイフを取り出す。

 青淵石の原石、純度100%の切れ味が良過ぎて箱に封印したナイフ。

 ナイフの切れ味は抜群。だけど、ナイフ程度の大きさしかなく、腕利きの職人が作った訳ではない。

 それでも青淵石の原石が売れるのなら、少しは金になるだろう。

 加工前の方が売れそうなら、戻すのもあり。


「ナイフを作ったのか。ナイフを作る技術を持つのか」

「いや、技術はない。丁度ナイフを作れる力を持っていたからそれでナイフの形を作っただけ」

「なるほど、切れ味は? ナイフの形を取っていても切れ味が悪ければ売れないぞ」

「それは心配ないかな。むしろ想定より切れ味が良すぎたから箱の中にしまってたくらいだから」

「どのくらいだ? 目の前で試してみてくれないか?」


 そういわれて、少し悩む。

 試し斬りはできる。

 でも、前と同じように木で試してもインパクトは少ないだろう。

 せっかくだから、切れ味を証明するちょうど良い試し斬りの相手が欲しい。

 木より硬く、この場にある物。


 ……床で試そうかな。石混じってるからそこそこ硬い


 視線を下に向ける。

 木や土、石が混ぜこまれた床。

 石はまだ試していなかったからちょうどいい。

 さすがに木よりも数段硬い石、傷つけることはできても、木のようには行かないだろう。

 僕はそう思い、ナイフを握って床に軽く突き立てた。

 売り物にする予定だから、ナイフが傷つかないように気をつける。


 ……あ、あれ……床にも壁と同じように石を混ぜて作ってたはず……


 ナイフは、スッと刺し込まれた。

 吸い込まれるように、なんの抵抗も感じない。

 床をたやすく貫いた。

 石の床に、深々と突き刺さっている。


「こ、このくらいの切れ味がある。ナイフにしては結構な切れ味だと思うけど」


 動揺を隠して、女性の反応をうかがう。


「ほう、白眉石を容易く貫くほどか、これほどの切れ味は並の職人では作れまい。商人に売りつければ高く売れるだろう」

「良かった」

「商人が来たらこちらに連れてこよう。その様子ではあまり外に出られまい」

「た、助かる。ありがとう」

「長居する用はないから帰る」


 そういって、小屋の扉を開けて去っていった。

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