表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
白龍は祈り紡ぐ、異界最強を〜安寧望み描いて覇道を往く〜  作者: 代永 並木
始まり

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

30/139

第30話 来客

 小屋に籠り考える。

 しかし、打開案は思いつかない。

 まっさきに、2つの問題が浮き上がった。

 まず1つ目、今この小屋の中、周囲に目的のものを作るために必要な材料が存在しないこと。

 木や岩、果実などは僕の知っている限りでは、使えないことはないだろうけど材料に向かない。

 材料に向いていれば、あちらでも日常的に使われていたはずだ。

 このひとつの問題については、見つけられるかが問題とはなる。

 けれど、それなら材料を探しに行けばいい。

 そこで2つ目が問題なのだ。


 それは今僕は、この状態で外に出たくないということ。外からの視線を阻める物がない状態。

 出られないわけではない。

 出たくないのだ。

 今の状態は、他の人に見られると問題があるのだ。

 ましてや、擬態時のこの姿は人に近い。

 材料探し中に誰にも見つからないのならいいけれど、見つからないとは限らない。


 ……どうしよう


 端的にいえば、僕は詰んだ。

 2つの問題を、クリアできる打開策が見つからない。


 別に僕は、小屋の中だけでも生きていける。

 数日分の果実や水がある、なくなってもゴーレムに必要な分だけ取りに行かせればいい。

 同じものを取りに行けという単純な命令だ。ゴーレムでも可能。

 他にも考えつく必要なものは揃っている。

 しばらくの生存は可能。

 ただそれは、左目の傷が癒えるまでの話。

 癒えたあとは、山の外に追い出される、

 このまま追い出されてしまう、それだけは避けなければならない。


「ゴーレムに取りに行かせるとかは……いや、それは難しいかな」


 材料をゴーレムに取りに行かせる。それが可能なら外に出る必要がなくなる。

 しかし、ゴーレムは単純な命令でしか動かせない弱点がある。

 行動そのものは単純でも、目的の物が曖昧でどこにあるかも分からない、そんな命令で動くとは思えない。


「……このまま外を探索は僕の中の何かを失う気がする。この目もしばらくは治らなそうだから……ゆっくり考えようかな」


 何かいい案がないかと考える。

 日が登り、日が落ちても考え続けた。

 でも思いつかない。

 時間だけが無為に過ぎていく。


 ……葉っぱで代用しようかな。耐久性とか心配だけど……他には思いつかないし……


 ボーと良い案がないかと考えていると、小屋の扉がノックされた。

 ビクッ、と身を震わせて飛び上がる。

 扉の方をじっと見る。

 ここを訪ねてくる存在は2種しか思いつかない。

 あの神狼族の女性、目の傷の状態の確認で定期的に来ると思っている。

 もう1種は人、龍の僕を捜索している集団。

 そーと扉に近づき、耳を澄ませる。


「ふむ、留守か? しばらくは小屋から出ていないと聞いていたが」


 聞き覚えのある女性の声が聞こえた。

 神狼族の女性の声だ。

 扉を軽く開いて顔を出す。

 首から下を見られないように隠す。

 人型に擬態している、相変わらず美人。


「居たか。傷の具合はどうだ?」

「痛みは引いたけど視界はまだ回復してない」


 僕は返答しながら、女性の姿に注目していた。

 人間の服を身につけている。

 そして、思い出す。

 擬態した時、服を身につけていたことに。

 オオカミの状態では服なんて持っていなかったのに、擬態した時に服を着ていた。


「そうか、なんだどうかしたか?」


 オオカミの女性は僕の視線に気づいたようで、首を傾げて聞いてくる。


「そ、その服ってどうやって手に入れたの?」

「服? あぁ、これか。これは遺物という物だ」

「遺物? あっ、中入る?」

「せっかくだ。入らせてもらおう」


 彼女に敵意はない、扉を挟んでの会話は失礼だから中に案内する。

 扉をきちんと閉めて、他に誰も入ってこないようにしておく。


 ……えぇっと、あっ、椅子がない。簡易だけど作ろう


 客用の物がないことに気づいて、急いで物体操作で2つの木の椅子を作り出す。

 簡易な椅子だけど、床に座るよりは良い。


「どうぞ」

「我は床で構わないが……借りるとしよう」


 それぞれ、椅子に座る。

 ひんやりとおしりに木の冷たい感触が来る。

 対面している形で話す。

 しっかり足を閉じて手は膝の上に乗せて座る。

 既に彼女には見られているのと、身体的にいえば、同性なのであまり抵抗感はない。

 当然のごとく、恥ずかしいけど。


「それで遺物というのは」

「はるか昔に神々か神に近しい存在が生み出したとされる道具のことだ。その中でもこの遺物は形を自在に変えられる便利な道具だ。擬態の時に使っている」

「な、なるほど」


 すごい便利な道具。

 まさしく、今僕が必要としている物。

 だけど遺物、つまり昔に作られたものなら同じものが他にもあるとは限らない。

 逆に作られた物なら似たような物が、複数作られている可能性はある。


「残念ながら我はこれ以外に遺物を保有していない。これも貸すことはできん」


 僕の考えは女性に見透かされていたのか、先に言われてしまう。


「だよね……」

「持っていたとして貸す義理もない」

「それはそう」

「そう気を落とすな。布切れなど奪えばよかろう」


 顔に出ていたのかバレてしまった。

 人から奪うのは、解決策として手っ取り早く確実。

 しかし、そういうことは出来ればしたくない。

 つい最近、老人から刀を奪った身でいうのは、変だと思うけど。


「それはちょっと……」

「殺しを躊躇する件と言い変な奴だな。……朗報かは分からないがこれに似たような物ならば知っている」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ