表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/139

第27話 妖刀

 少し空中へ移動する。

 この身体は、巨体故に森の中は動きづらい。

 動きづらいと斬撃を躱せない。

 あれは、飛竜の爪より危険に感じる。


 ……戦闘狂という奴かな


 僕の龍の姿を見て驚きこそすれど、闘志が消えるどころか、さらに燃えているようにも感じる。

 戦闘狂と呼ばれる類の人種だろう。

 歳をとり肉体が衰えたはずなのに今も尚、戦いに身を投じている時点で普通ではない。


 炎を、目の前に作り出す。


 ……戦闘不能にする……少し抑えて


 できるだけ殺さないようにと、少し調整をする。

 火力を少し抑えた炎を放つ。

 ブレスのように放たれた炎を見て、老人は避けようともしない。

 炎は、老人の居た所を燃やす。

 少し加減こそしたが、まともに喰らえばただでは済まない火力の炎。

 直撃した……と僕は思ったが、それは、間違いだと1秒後に気付かされた。

 咄嗟に体を大きく動かして、斬撃を避ける。


 ……炎を切り裂いた!? ファンタジーかよ


 ブレス状に放たれた炎は、物の見事に真っ二つに切り裂かれている。

 どういう原理かは分からない。けれど、どうやら炎は切れるらしい。

 意味がわからない。

 もう1つ分かったことは、あの斬撃は攻防ともに優秀ということ。

 攻撃を切って防ぐ、攻撃は最大の防御と言わんばかりの脳筋過ぎる恐ろしい技。

 老人は続けて数度振るう。

 身体を反らして躱す。

 これだと龍の姿になって、逆に的が大きくなっただけかもしれない。

 斬撃の余波で、木々がなぎ倒されていく。


 物体操作で地面の土を操り、土の手で老人の身体を拘束しようと試みる。

 刀を振るえなくさせれば勝ち。

 しかし、素早く振るわれた刀によって、老人に届く前に切り刻まれた。

 先に足を掴んでから動きを封じて、複数の土の手で全方位から仕掛けるが、関係なく全て切り裂かれた。


 ……早すぎる


 炎を放って牽制をするが、炎をものともせずに老人は切り伏せる。

 老人の身体能力は衰えているからなのか、接近してきた時の速度を考えて想像してたほどではない。

 しかし、刀を振るう速度は、尋常ではなく異常なレベルの速さだった。

 何年も何十年も磨かれた技術、恐ろしい


 ……あれを封じるには……あっ、物体操作で操れば


 物体操作の力を使い、刀を対象にする。

 刀を操って老人の手から奪う。そうすれば、あの技を封じられる。

 それが出来れば、撤退を促せる可能性もある。

 刀を暴れさせようと命令を出す。

 その時、近くでピシッ、と何かが割れる音が聞こえた気がした。


「……なっ……ぐぅ……ぅぅ……な、何が」


 突然、左目に強烈な痛みが発生した。

 尋常ではないほどの痛みが、ズキズキと目の奥から発生する。

 それだけじゃない。

 視界も、おかしくなっている。

 右目の方の視界は正常、何も変わっていない。

 しかし、左目の視界は、ヒビが入ったスマホ画面を通して景色を見ているかのように、ひび割れている。


「この刀に何かしようとしたのかのぉ。この刀の正体までは見抜けぬようじゃな」


 ……刀……あの刀に何かあるのか


 刀を、物体操作の対象にした瞬間に起きた。

 ゴーレムを作る時や岩を運ぶ時や、道具制作の際には何もなかった。


 ……舐めてかかってた。良く考えればそうか


 痛みのおかげで、冷静になれた。

 この魔法のある世界であちらの世界と類似した形、用途の道具がある。

 そこは少しは、不思議に感じるけど別に良い。

 作られた理由などはあるのだろう。けれど、今はどうでもいい。

 あちらの世界と同じ刀という道具。

 あれは武器だ。相手に害をなすための道具だ。

 魔法のある世界で、その道具に戦いに使える小細工が施されていないわけがない。


「正体?」

「妖刀じゃよ。能力の1つに魔眼殺しと呼ばれる力があってのぉ」

「……ならば」


 刀による攻撃を避けて、尻尾を振るう。

 老人を戦闘不能にする。

 能力の1つということは、他にも何かあるなら刀を狙うのは危険。

 左目は、しばらくは使えなそうだけど、まだ右目が残ってる。


 ……炎や物体操作は意味をなさない。なら


 防御の力を使い、斬撃を防ぎしっぽを叩きつける。

 単純な巨体から放たれる質量の一撃。

 生身の人間ならたやすく潰せる。

 もう加減は本当にしない、これ以上戦闘が長引いたら本当に殺されかねない。

 老人を吹き飛ばす。

 吹き飛ばされた老人は、地面に打ち付けられ地面を転がった。


 ……咄嗟に刀で受けたか


 刀を盾にして、直撃を免れたようだ。

 しっぽを構えて待つ。

 老人は動き出そうとするが、身体が思うように動かないのか立ち上がらない。

 刀で防いだとはいえ生きているのに驚きだ、防いだ刀も傷1つ付いていない。

 老人は、立ち上がる事はなく、すぐに意識を失い倒れ伏した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ