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第24話 邪魔者

 僕よりも、身長の高い冷たい雰囲気の美女。

 ただその姿は完全な人ではなく、頭から2本のオオカミの耳が生えていて、腰付近からオオカミのシッポがヌッと出ている。

 人寄りの獣人の見た目をしている。

 擬態が女体である事からして、どうやらオオカミは女性だったようだ。


 綺麗な青色の目が、僕の姿を映す。

 彼女の格好は裸ではなく、露出の少ない青い美しい服を着ている。

 見ていたのに、いつ着替えたか、分からない。


 ……人型になる時に服を着れるのいいな


 僕の場合は、服を破かないようにバッと脱いでから戻して、人型になる時にまた拾って着る必要があるから羨ましい。


「擬態?」

「そうだ。何も龍種だけの特権ではない。もっともあまり得意ではない」


 ……得意ではない……つまり擬態は完全に人間の姿そっくりにできるとか?


 僕もツノが生えているから完全ではない。だから、バレたのだろうと、僕の擬態を見抜いたあの冒険者の女性を思い出す。

 それならば、完全な擬態ができるようになりたい。

 できるようになれば、人里で食料、道具などの確保ができる。

 取引に金が必要になるけど、擬態さえ出来てしまえば金を得る方法なんて幾らでも探せる。


「普段は使わないが本来の姿よりは遭遇しにくい」

「確かに」


 確かに、オオカミの姿と今の擬態時の姿では、大きさがかなり違う。

 人型に近いだけあって草木に潜みやすい。

 もっとも彼女の綺麗な薄青色の髪は、この森の中ではかなり目立ちそう。

 でも万が一、遭遇しても擬態ならワンチャン騙せる可能性がある。


「崖を降りるぞ」


 そう言ってオオカミ、いや、女性は崖を飛び降りて、綺麗な着地をした。

 ついて行く為、後を追って崖を飛び降りる。

 数メートルある崖だが、龍の肉体なら問題なく降りる事ができた。


 遠回りして、集落内で活動している人たちに勘づかれないように森の外を目指す。

 遠回りをしているため、集落の様子はこちらからは全く見えない。

 人間の姿も見えず、声も聞こえない距離。

 女性の後ろを静かに歩く、大きな音を出したら人間にバレてしまう。

 彼女も、静かにほとんど無音で歩いている。


 ……すごい静か、どうやっているんだろう


 静かな歩き方、どのようなやり方でそれを実現しているのか気になる。


「近すぎたか。勘のいい」


 しばらく歩いた後に女性は突然歩みを止めて、小声で何かを呟いた。

 その言葉を、僕は聞き取れなかったが、集落の方向に顔を向けたことには気づけた。

 釣られるように集落の方へ視線を向ける。

 集落の周囲に設置された柵も見えないくらいの距離、特に何も見えない。


「どうかした?」


 ちょっと近づいて、小声で聞く。

 彼女は何かに気づいた様子だ。


「視線を感じる」

「視線?」


 僕は、視線を特に感じていない。

 もう一度、集落の方を見る。

 視線どころか、気配も何も感じない。


 視線を女性に戻そうとした瞬間、ゾクッと身が震える何かが来た。

 先程は感じなかった視線を、今感じた。

 バッ、とその視線の方向を確認する。

 姿は見えないけれど、確かにこの先に誰かが居て見られている。


 ……これか。今感じたのは僕を視認したからか?


「集落からは結構離れているんじゃ」

「勘のいい奴がいるようだ。構えておけ」


 女性の雰囲気が変わる。

 物々しい、おそらく戦闘態勢。

 僕も身体強化を使って、構えておく。

 この視線の主は、穏便に済む相手とは思えない。視線に感情が込められている気がする。

 正確なことは分からないけれど、少なくとも良い感情ではない。


 少し構えて待っていると音がする。

 前方から、集落のある方向から草を踏み締めて、何かが接近する音が聞こえる。

 その音は早い速度で、僕たちの居るところに向かってきている。


 ……早っ!? 相手は人間だよね?


「早い」

「面倒な」


 接近する音が早すぎる。

 人間業に思えない。

 その正体を確認しようと目を凝らして見てみるが、まだその姿は見えない。


 ゾクリ、と何かを感じた瞬間に飛び上がる。

 そして頭上にあった木の枝に掴まったが、掴まった木の枝は、重力に従い地面に落ちる。

 慌てて着地をする、下手な着地はせずに済んだ。

 同タイミングで女性も地面に着地をした、気づき回避していたようだ。


 ……今のは……何?


 おぞましい何かを感じた。

 初めて感じる感覚、この場での言語化が難しい何か。

 いや、今はそんなことどうでもいい。

 後ろを一瞥する。

 木が薙ぎ倒されていた、綺麗な断面で真っ二つに、切り裂かれている。


「おや、今ので仕留められんか。儂も衰えたかのぉ」


 刀を持った老人が現れた。

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