第15話 小屋強化
「どんな形にしようか」
小屋の形を考える。
今は適当に作って思いつき次第、物体操作で作り直すという事も可能だけど、それはすごい手間。
作り直すだろうけれど、ある程度はちゃんとした形に整えておきたい。
しばらく考える。
……建築はよく分からないし芸術関係は苦手……無難な形にしよう
僕は建築関係の仕事をしていたわけでも、芸術関係に関わっていたわけでもない。
自分の家なのだから良い形を目指したいけれど、僕は自分のセンスに自信はない。
むしろ、この手の話は苦手だ。
そうなると挑戦はせずに、無難な形が1番。
強度を高めたと言っても、壊されないとは限らない。
ぶっちゃけ、岩で硬くしても、この身体なら粉砕可能な強度なのだ。
飛竜でも破壊出来る。
下手に見た目に力を入れると、また壊された時にショックが大きいのは、目に見えている。
だから優先は、外見の良さよりも機能性。
……とりあえず前より広く壁は厚くかな。4本の木の柱と木と石の混合で壁かな
物体操作で木に触れて、木の形を変化させる。
木は粘土のように、形を変えていく。
最初に立派な4本の柱を作った。
この柱を使って、大まかな小屋の大きさを決める。
「ここと……この辺かな。ゴーレム、地面に刺して」
3体のゴーレムに、柱を運んでもらう。
ゴーレムは、僕が指示を出した大体の位置に、柱を持っていく。
そして、勢いよく柱を叩きつけて、深く突き立てる。
結局、前回は小屋は燃えてしまったので効果はなかったけれど、前と同じように地面に刺しこんだ部分の形を変えて、土を固め固定する。
次は役に立つかもしれない。
細かい行為は思いがけない時に、効果がある。
……土も少し混ぜようかな。土も固めたら結構硬くなる印象あるし
少しだけ土も混ぜて、木と岩を混ぜた壁を形成した。
混ぜて更に複数の層を作り、壁を構築した。
軽く、コンコンと叩く。
岩を混ぜている事で、木だけで作った時よりもはっきりと硬く感じる。
何層にもなっている分、衝撃も逃がしやすい。
……うん、硬そう。これなら火でも燃えきらない
燃えたとしても、これなら部分焼けで抑えて全焼は避けられる。
厚みがあることを確認した後、先に刺した柱にくっつけていく。
その後に、屋根を作って乗せて扉を作り、完成した。
扉は簡単な木の扉。
中は明かりがないので、相変わらず暗い。
手元で、炎を出して明かりを作る。
床にもしっかり岩を混ぜているので、床に炎が触れても、燃え広がることは多分ない。
小屋の端に、果実を詰めこんだ木の箱を置く。
……岩は余らなかったから明日取りに行こうかな
ゴーレムと一緒に運んだ岩は、小屋に使っている。
前回より大きく作ったこともあり、想定より多く使用していた。
その上、少し物体を圧縮して密度も高めてもある。
もっとも、これがどれだけの効果をもたらすかは、今の僕には分からない。
「小屋は完成、次は道具、石があれば水筒が作れる。持ち運ぶもので石は重そうだけど仕方がない。あっ、石の箱は欲しいな」
岩を確保した後、すぐに作れるように、今必要な道具を考えてピックアップしておく。
まず石の水筒があれば、水を持ち運べる。
そしてその水筒は、近いうちに行う予定の材料探しの遠出に、必須な道具の1つだ。
石の箱は燃えないから安心して、小屋に置く。
ただ熱は通すから中の果実が無事で済むかは、その時次第だろう。
少し焼ける程度なら、風味や味のアクセントになる。
多分違うけれど、石焼きみたいな物だ。
心配はあれど、木の箱よりは安心だ。
ちらっと小屋の窓から、空を見上げる。
まだ明るく、夕方にもなっていない。
「まだ夕方にもなってないけど岩探しは明日、早朝から行こうかな」
……魚取ろう。服は置いて
服を脱いで、水に潜る。
そして、水に身体を委ねて静かに水の中で待機する。
全身の力を抜く。
……ふぅ、準備万端
全身の肌で水の流れを感じ、魚の動きを読む。
近くに来た瞬間、手慣れた動きで魚を鷲掴みにする。
魚を火で焼いている最中に、木の箱からいくつかの果実を取り出す。
香ばしい焼き魚の匂いが鼻腔をくすぐる。
「せっかくだし」
木の棒を果実に刺して、火の上で軽く回して焼く。
果実も焼くと風味や味が変わる。簡単な焼きしか出来ないけれど、試すのはあり。
良い香りがし始めたので火から離す。
そして、果実を先に齧る。
「おぉ、美味しい!」
果実は風味が強くなっており、旨みが口全体に広がる感じがする。
次に魚にかぶりつく。
焼き魚も良い焼き加減なのか、焦げた味や臭いはせずに美味しい。
果実と魚の相性は良く、口の中で味の喧嘩をしない。
僕はペロッ、と食べ終えた。食事を済ませて、明日に向けて早く眠る準備をする。
今、僕は疲れは感じていない。
だけど、今日は本格的な戦いを行った。
飛竜を圧倒していたとはいえ、能力の多用に本来の姿に変わっての戦い。
殺す気はなかったけれど、別に手加減もした気はない本気の戦い。
疲れを感じずとも、確実に身体に疲労は溜まってる。
早く寝て、明日に疲れを持ち越さないようにしたい。
明日はやることがある。
支度を済ませて、眠りにつく。