第137話 魔法作成の難易度について
夜、魚を取り焼く。
3人で食べていると、カミラが口を開く。
「明日、薬草植える。場所を教えて欲しい」
「分かった。明日の朝教える」
「早起きする」
「ゆっくりでいい。そっちのペースに合わせる」
「何か手伝うことはありますか? 先生も何かあればお気軽にどうぞ」
「薬草は1人で出来るから大丈夫」
「分かりました」
変装してからイオラは、メイド服のままで口調も敬語になっている。
カミラには、暗殺の話は一切伏せて、簡単に事情を話している。
暗殺に関しては、話したくない内容らしい。
僕は、基本的に本人の意思を尊重するから、それでも構わない。
カミラは、これも手品の練習と言ったら、すぐに納得してくれた。
「薬草は害虫対策の薬草も一緒に?」
「そう、芽吹くのに時間かかるから」
「どのくらい?」
「早くても1ヶ月、遅いと半年?」
「そんなになのか」
「あの種は特殊で栄養が足りないから、芽吹くのに栄養を多く得る必要がある」
「なるほど、栄養満点な土地なら早く、乏しい場所だと遅いのか」
……ならここは適してそう
この辺は栄養が乏しくはない。
栄養が豊富かは知識がないから、なんとも言えないところではある。
ただ自然に生える植物を見ている感じ、栄養派豊富そうに感じる。
「栄養が豊富かどうかって調べられるの?」
「その道具も持ってるから明日確認する」
「おぉ、用意周到……その薬草は魔法って大丈夫?」
「魔法の物による」
「こういう魔法なんだけど」
僕は、アース・ライフのことを説明する。
あの魔法は、栄養を活性化させて植物の成長を促進させる物。
薬草類にも使えるのなら使いたい。
成長促進は少ない量を育てているカミラにとっても、相性が良さそうだ。
「凄い魔法、どこで知ったの?」
カミラは食いついてくる。
薬草を育てる身としては、喉から手が出るほどに欲しい魔法なのだろう。
「それは農業系では重宝される魔法ですね。この魔法発表したら凄い事に……」
イオラまで感心している。
自分の作った魔法を、ここまで褒めて貰えるのは嬉しい限り。
「この魔法は僕が作った。植物育ててるって言ったじゃん? その時にあると便利だなぁって」
「魔法ってそんなにポンポン作れるもの?」
「作れない物?」
「それは、物によるとしか――丁度良いですから説明をします」
イオラはそう言って説明を始める。
この中ではイオラが、一番魔法について詳しそうだ。
僕は人の魔法については、ほとんど知らないから興味津々で前に座り待機する。
その隣にカミラが座る。
イオラ先生による魔法講座のお時間。
「まず今の時代では、新しい魔法を作る必要がないと言われるほどに増えてます。ですから率先して作る人は少ないです」
「そんなに?」
「はい、総数は数千数万はあるかと」
「魔法が発展してる環境ならそりゃ増えるか」
科学が早い速度で発展していたように、こちらでは昔に魔法の産業革命が起きたのだろう。
そうなれば、各種様々な魔法が量産されていてもおかしくない。
そんな状態なら新しく魔法を作る理由もない。
僕の場合は、知らないから作るしか無かった。だからイレギュラーな事例。
「例を挙げると攻撃魔法は、相当デタラメな物でなければ難しくはありません。収納魔法は高難易度に属しますが、こちらは作るよりも使う方が難しいタイプとなっております」
……高難易度の魔法を取引条件にしてたのか。命と引き換えと考えれば妥当……なのか?
シク先生が居たお陰で何とかなった。
シクには、本当に助けられている。
いずれ、何かお礼をしたいところ。
「でも収納も作れはすると」
「法則さえ知っていればという前提があります。で、1番難しい魔法は物体の、それも一部に影響を与えると言う魔法です」
「あぁ、確かにアース・ライフは栄養関係のみだね。それと物体に影響を及ぼす魔法は、強弱が難しいとは聞いている」
「治療魔法と同じ?」
作った際にシクが言っていた。
物体に影響を与える魔法は、効果が弱ければ使えず強すぎたら周囲を壊すと。
「はい、その通りです。治療魔法で高度な魔法が必要になると言った事と近い理由なのです。故に魔法が発展しても生まれなかった魔法、それを貴女は作りました」
「……つまり僕は凄いと」
「はい、端的に言えば天才です」
「ユマ凄い」
僕は、自慢げに鼻を鳴らす。
まさかあの魔法で、ここまで褒められるとは思いもしなかった。
……龍の魔力とシクのおかげだけど
僕の力と言うよりは博識なシクと膨大な龍の魔力、後あちらの世界の知識のおかげだ。
でも作ったのは僕だから、有難く褒め言葉は受け取っておく。
「説明は終わりです。それで先生、薬草に使っても大丈夫でしょうか?」
「問題ない。その魔法なら悪い効果は少ない。既に複数の植物を育てているなら効果は保証されている」
「それじゃ、明日魔法使う」
食事を終えて各々支度や準備を済ませて、明日に備えて眠りにつく。