第136話 暗殺者の組織
初めて使う発動の式だったけれど、シクの指示の元上手く出来た。
この魔法には距離や使用に色々と制限がある。
ただ、代わりに収納数はかなりな物。
僕を起点とすることで使用時の魔力を肩代わり出来るのも強み。
「これで取引は完了」
「もちろん、そこまでされたなら充分、そしてさらに取引を提案したい」
「は?」
僕は素で声が出る。
まさか、他にも取引を持ち掛けられるとは思ってもなかった。
……内容によっては断るか
2つ目に関して、無理に取引を受け入れる理由は無い。
脅しをするようなら表で戦闘続行だ。
もしも、そうなったらカミラには小屋の中で待ってて貰おう。危ないから
「あぁ、心配しなくていい。依頼は破棄する」
「なら何の取引?」
「ここに住まわせてくれないか? 先に理由も伝えておく。私は暗殺者の組織に属してる。依頼も組織経由の物、それを破棄するとその責任は取らないと行けない」
「つまり?」
「自決だよ。私は死にたくないから逃げたい訳」
……それって
何となく嫌な予感がした。
逃げなければならないという事は、自決しない場合は暗殺者が仕向けられるのだろう。
それを凌ぐのが難しい。
それは、イオラ以外にも厄介な暗殺者が組織に居ると推測出来る。
「手品の仕事は?」
「引き続きやる予定、彼らは表では仕掛けてこないから、それに私はNo.2までなら凌げる」
「君のナンバーは?」
「No.4、こう見えても上位の実力者」
……3と2を凌げるって事は、相性的な話かな
No.4のイオラが自分を上位の実力者だと話している事から、No.の数字が強さの基準となっていると分かる。
イオラ自身よりも格上の番号を相手取れるなら、余程相性が良いのだろう。
「No.1は?」
4や2が居るなら、居るはずの1が、先程の話には出てなかった。
つまり、凌げる相手じゃないという事だ。
「無理、彼はそういう次元じゃない。そもそも多分人じゃないんだよね」
「人じゃない? 擬態してる別種ってこと?」
「いや、あの感じだと……いや、確定じゃない話をするのは違うか。彼が来た時に護衛が居てくれると助かるのと匿ってという話」
「人前では無理だぞ。あとカミラはどうする?」
僕ならそれなりに戦える。
だけど、彼女は非戦闘員だ。巻き込まれたら守り切れるか分からない。
そもそも、そんな危険な目に合わせたくない。
「彼は人前では殺しをしないから大丈夫、あと対象以外も殺さない」
「仕事人ってこと?」
「そう、彼は私と同じで暗殺を仕事でやってるから」
「こちらのメリットは?」
「無料で手品が見れる」
イオラは、カードを取り出し微笑む。
「却下、追い出す」
僕は首根っこ掴んで外に放り投げようとする。
彼女は、慌てふためき弁解をし始める。
「待った、冗談冗談! 器用だから手伝えることは多いと思う。それにここにいる間は変装する」
「変装?」
「こんな風に」
イオラは、大きな布を取り出した。
そして、自分の姿が見えないように布を大きく広げて前に出す。
……手品でよく見るヤツだ
布が落ち切った時には、イオラは先程とは全く別の格好をしていた。
メイド服を着ている。
クラシカルと呼ばれる種類に似ている。
頬にあったマークも隠しているのか見えず、受ける印象は別人そのもの。
クール系の女性らしさがあって、薄紫の綺麗な髪色が目立つ。
僕は感心する。手品師らしい凄い技術だ。
「どうでしょうか」
「髪色で暗殺者にバレない?」
「私の髪色は珍しくありませんから、下手に変えるよりも安全と言えます」
「分かった、匿う。代わりに暗殺者の特徴は知る限り全部教えて」
「もちろんです。ユマお嬢様」
「まぁ、そっちの方が自然ではあるか……?」
メイドの印象としてはやはり仕える者、僕が主設定の方が自然な気もする。
呼び方がなんか凄い気になるけど。
僕はメイドとなったイオラから、暗殺者の組織に属する人々のことを聞いていく。