第134話 朝の会話
翌朝、早朝に起きて顔を洗う。
そして、軽く果実を食べる。
嗅ぎなれた草木の匂いがする。
この匂いは結構好きだ。
……量が少なくなってきた。増やさないと
果実の量が少なくなっていた。
消費量が増えたからだろう。今日のうちに取りに行かないと多分、明日の朝分はない。
「ゴーレム、静かに動け」
ゴーレムを静かに動かす。
まだカミラが寝ているから、起こさないように静かに進める。
イオラは既に起きて、手品道具の手入れをしている。
僕よりも早起きだ。
やることは、家の制作。
……要望は薬草を置ける棚だったっけ。せっかくだから多く作ろう
小屋の隣に制作する。
薬草畑が出来る反対側が良い場合は、ゴーレムに運ばせればいい。
固定はせずに形だけを作る。
家の見た目に関しては、注文はなかったのでシンプルに作る。
外側は残っていた地龍から、受けとった銀色の鉱石を使い強度を高める。
「薬草小屋かい?」
道具の手入れを終えたイオラが、音に気づいたのかこちらに来る。
物体操作で作っているところを見て、彼女はほうと感嘆の声を出す。
「そう、薬草置ける家、場所は後々カミラに聞くからここに仮置き」
「倉庫ということかい?」
「いや、とりあえずカミラ専用、一応家としても使えるようにする予定」
……あぁ、倉庫も作りたいな。簡単な奴
僕としては、小屋に泊まり過ごすでも困らない。
あの小屋は物が少ないタイプの僕1人では、ちょっと大きく感じるくらいの大きさがある。
3人の生活スペースには少し狭い気もするけど、大きな問題は起きなそう。
ただ、それは僕の話で、カミラ自身がどう考えているかは別だ。
ぶっちゃけ、ほぼ初対面クラスの人と一緒の家とか抵抗感多い人の方が多い。
「なるほど」
「君も家必要なら作るけど」
「光炎灯は1つしかないから、あの小屋に泊まりたいな」
「それは構わないよ。あっ、他にも幾つか遺物って持ってたりする?」
「おや、鋭い。私は遺物は複数持っているよ。手品用や生活用が」
「遺物って結構出回ってるもの?」
レアなイメージがあったけれど、カミラとイオラの2人とも所有している。
イオラに関しては、複数所持していると来た。
あまり珍しいものでは無いのかもしれない。
「物によるかな。大量に残ってる物もあれば貴重な効果の物もある。ただ光炎灯と重力の腕輪は珍しい部類」
「なるほど」
「君は何か持っていないのかい?」
「この服が遺物、形を変えられる」
「それが噂の……」
彼女は服をまじまじと見始める。
噂になるような遺物のようだ。
便利でかなり助かっている。
……良い効果の遺物を買い集めたいな
遺物の効果によっては、戦闘や生活に使える。
僕としては、どちらでもありがたい。
貴重な物は効果は強いが買うのが難しい。狙うなら大量にある物で良い効果を持つ物。
それならば、比較的安価で手に入れられる。
最もその場合、金を得る手を考えないとならない。
それは後回しだ。
「泊める代わりに、持っている遺物を寄越せとは言わないのかい?」
「それは君との取引に入ってない。それに光炎灯を借りられるだけで十分だよ」
「ふむ、そうか、それで取引用の収納魔法には、いつ取り掛かる?」
「……畑を守るための防御魔法の後でいいかな? 害虫ではなく、外的被害から」
やることが複数あって、同時にこなせない。
防御魔法は僕の畑だけでなく、カミラの薬草を守る為のものでもある。
いつまたここで戦闘が起きるか分からないから、急ぎで欲しい。
「……防御の魔法なら私が使えるよ」
「どんな魔法?」
「結界魔法と呼ばれる種類の魔法、発動してしまえば壊れるまで効果は続く。ただ特殊な陣を敷く必要があってね。戦闘中に使える物じゃない」
「その陣に必要なものは?」
「ちょうど今、1回分ある」
イオラは、フッと笑いカードを見せてくる。
そのカードが、陣に使う物なのだろう。
準備が良い。
防御魔法さえあれば、取引の魔法制作に取り掛れる。
新しい問題が起きなければ。
「なら、収納魔法急ぐのと、他にも何かある?」
「収納魔法だけ、ただ少し容量が大きい物を求める」
「ハードルを上げてきたなぁ。何とかしてみよう」
ハードルが上がったけれど、仕方がない。
色々と試しながら作るしかない。
ひとまず、カミラ用の家と家の中に薬草を置ける棚を作った。