表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
126/139

第126話 冷気対策

 拳を連続で振るう。

 凌がれ、足を素早く蹴られる。

 そして、顔面目掛けて拳が迫る。

 片腕を差し込んでガードする。

 鈍い音が響く。腕を大きく振るう。

 彼女は身体を落とし避け、その体勢から素早く蹴りを繰り出す。

 大きく動いて、回避して距離を取る。


 格闘戦で押されている。

 身体能力の差はほとんど無い。

 技量の差が大きい。


 ……カラクリが分からない


 龍の身体能力は高い。

 その身体能力に仕掛け無しで、渡り合えるのは違和感がある。

 彼女も龍種か近い種の可能性もあるが、それを確認する手は思いつかない。

 冷気で凍える身体の震えを抑え込む。


 ……本当に冷気の魔法が寒い


 手品師の攻撃を避けて、蹴りを叩き込む。

 これも避けられる。

 鋭い一撃をウロコで受けて凌ぐ。

 どのくらいの時間か分からないが、ひたすら格闘戦を続ける。

 攻撃が当たる度、ガンッと硬いものがぶつかったような音が響く。

 劣勢だが能力や魔法は使わない。


「ふぅ……」


 手品師が、呼吸を整えている音が聞こえた。

 疲れているようだ。

 体力は無限じゃない。

 なら今が攻め時、拳を振るう。

 踏み込んで攻め込む。

 攻撃が捌かれているが、構わず続ける。

 攻撃を受けても堪えて攻める。

 ウロコがない部分への攻撃は痛いし、衝撃が重いけど、堪えられない程じゃない。


「本当に硬いね」

「お褒めに預かり光栄だ」


 そして、疲れで動きが鈍ったところを踏み込んで、攻めると一撃が掠る。

 手品師の頬が軽く切れる。

 彼女は顔をしかめて、距離を取る。

 素早く、両手を動かしてカードを取り出す。


 ……服の中か。でも今どうやって


 今回は見えた。

 ポケット以外にも、何ヶ所かを触っていた。

 そこから、カードを引き抜いたのだろう。

 服全体がカードの隠し場所なのだろう。厄介だ。


「手品師の技術かな。手品の場なら拍手物だ」

「今は貰えないか。それは残念、龍相手にこのままは無理のようだ。仕方がない」


 彼女は2枚のカードを投げた。

 僕は、ゴーレムを警戒して構える。

 まだ後3体のゴーレムが居る。


「解」


 ……来る


 物体操作の力で待機しながら、身構える。

 出てきた瞬間に崩して無力化する。そうすれば相手の手札を奪える。


「寒っ」


 2枚のカードからは、凄まじい冷気が現れて周囲の気温をさらに下げていく。

 手足から凍り付きそうになるくらいに寒い。

 今の僕は夏用と言える格好、冷気が肌を撫でる度に凍えるほどの寒さを感じる。

 もっとも多少服を厚くした程度で、どうにかなる寒さではない。

 これは不味い!

 能力を切り替え、炎を出してばら撒く。


「封」


 炎が消される。

 また亜空間に炎が飛ばされた。

 だけど、気にせず炎を出しばら撒き続ける。

 このまま、冷気を放置していたら身体機能の低下だけでは済まない。

 気温というのは身体に大きな影響を与える。

 相手の手札が増えることは、承知で周囲の気温を熱で上昇させる。


「封――やられたな」


 手品師は、魔法で幾つもの炎を消し去った。

 しかし、途中で炎は消されなくなる。

 理由は分からない。けれど、これを好機と見て、炎を飛ばし冷気を消し去る。


 ……なんだ? ――そうか! 魔力が切れたか収納限界に来たか


 出した炎の数を僕は覚えていないが、大量の炎を作り出していた。

 だから、亜空間魔法を使ってカードに炎を仕舞い続けるのは消費が多い。

 カードに仕舞うタイプの魔法なら、仕舞えるカードの上限が存在するとも考えられる。


「解」


 彼女は2枚のカードを投げ、炎とゴーレムを亜空間から取り出す。

 炎の熱で凍えていた身体機能が戻ってきた。地を踏み締めてまっすぐ突っ込む。

 炎はウロコで受ける。熱さは感じるけど火傷するほどでは無い。


 ゴーレムは物体操作で崩して無力化する。

 そして、懐に入り拳を握って、彼女の胴体目掛けて大きく振るう。


「降参」


 僕は寸前で止める。

 風が吹き燕尾服を揺らす。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ