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第123話 検査と処置

 僕はカミラの指示に従う。

 指示を受けて検査しやすい格好になる。

 僕はチラッと手品師の方を見る。

 補助で入っている手品師、性別が分からない。

 手品師は僕の表情を見て頷く。


「あぁ、済まない。安心して欲しい、私は女性だよ」


 スッと僕にその証拠を見せる。

 それは一目で僕でもわかるものだった。

 手品師は服を戻し微笑む。


「これで証拠にはなったかな」

「十分……むしろ疑ってごめん」


 僕は、少し目を逸らしつつ言う。


「いや、分からなくしてるから仕方ない。君のような女性相手なら気にしないさ」


 手品師はウインクをする。

 僕らは、声を落としてやり取りをしていた。


「最初の検査はそのまま椅子に座っていい」

「分かった」

「支えが必要になったら、手を貸すから遠慮なく教えて欲しい」

「わ、わかった」


 丁寧に検査を始める。

 僕は、前に傷を負って治療した部分を覚えている限り、伝える。

 水を軽くつけた指は冷たく、ヒヤッと来る。

 軽く身を震わせる。


「大丈夫かい?」

「冷たいのにびっくりしただけ」

「こことここ……何か変な感覚はある?」

「特にないかな。あぁ、でもここは違和感あるかも」


 質問には正直に答える。

 治療の時に隠すような話でもない。

 指でその部位を指して伝える。


「ここも傷を?」

「ここはどうだろう。覚えてないな」


 僕は首を傾げる。

 僕は受けた傷の位置は正確には覚えてない。

 戦闘中だった事と、直ぐに治療していた事もあり記憶は大雑把だ。


「次の体勢はこうして」

「少し支えるよ。失礼するね」

「あ、ありがとう……こう?」

「その姿勢で」


 指示で体勢を変える。

 隅々まで検査されてた後、カミラは薬を見る。

 この症状に何の薬が適しているか、を今考えているのだろう。

 待っている間に手品師に質問をする。


「君は手品師だよね?」

「あぁ、そうだよ」

「なんで薬草師と一緒に?」

「それはね。下の集落で彼女に会った時に、龍に薬草を売りに行くと言っていたから、心配になって付いてきたんだよ」


 ……あぁ


 僕は納得する。

 カミラは天然っぽい人間だ。

 龍に薬草を売りに行く発想も、普通からはかなりズレている。

 僕でもその話を聞いたら心配になる。


「戦えるの?」

「まぁ、何かあった時に1人連れて逃げるくらいなら何とか出来るかな」


 手品師はおちゃらけた風に言う。

 龍相手に1人連れて逃げるのは困難だろう。

 それが出来るとなると、やはりそれ相応の実力を持っているのだろうか。


「薬、3種類、塗り薬と飲み薬と……」


 カミラは少し言い淀む。


「あと一種類は?」

「飲み薬と似た用途、ただ使用箇所が違う」

「……それって」

「2種類よりも効果が高い上、即効性がある。私のオススメ、でも……」


 カミラは僕に使用箇所、方法を説明をする。

 そして、この世界でまだ確立された手段ではないとも言っている。

 それだけでなく、他人に使うことは機会がなく初めてだとも。

 話を聞く限りだと、前2種類の方が良い。

 ただ、僕はそのタイプの薬を知っている。


 ……どんな物かは分かった。使うなら効果が高い方がいい。それに……


 カミラを見る。

 カミラの自信は、おそらく自分の経験や知識に基づいている。


「その薬で」

「良いの?」

「専門家としてその薬が効果的でオススメなんでしょ? なら従うよ」


 カミラは力強く頷く。

 僕はそちらの知識に精通している訳では無いから、こういう話は指示に従うに限る。


「体勢は……これでお願い」

「補助するよ。君の両手はここに」

「こ、こう?」

「もう少し」

「少し力を抜いて、そうその体勢を維持、支えるから安心して」

「1回深呼吸をして」

「先生、このままで?」

「私の方は大丈夫」

「私も気にならない」


 手品師の支えがあるから楽だ。

 その体勢で待っていると薬の投与が終わった。

 薬は、ひんやりとしていた。

 薬が効くまで大人しくする。


「30分くらい安静にしていたら大丈夫、人に使うの初めてだから、何か変なところあったらすぐに教えて」

「効果はまだ分からないけど、手際は良かった」

「なら良かった」


 今日一日は激しい運動はなしで、安静にした方がいいと言われた。

 仕方ない。安静にしよう。

 治療は無事に終わった。


「何か異変あったら、集落にいるから直ぐに報告をして欲しい。経過観察も治療の一環」

「私もしばらく滞在するから手品見に来てよ」


 手品師は、そう言って1枚のカードをくれた。

 2人は、集落に帰っていく。

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