第118話 虫食い
半龍化を解く。
地龍が山に侵攻するためのルートを、地龍の案内の元、進んで数日かけて小屋に戻る。
往復だけで時間がかかった。
帰りは森を経由して平原を通らなかったことで、夜の暑さに苦しむ事はなかったのが救い。
森の中で果実を回収する。
水に関しては、地龍の王に挑む前にやっていた仕組みが上手く言っていたようで、飲み水を確保出来ていた。
貯めていた雨水は、ゴーレムの形にした時に、零してしまった。
受け皿がなかったから仕方がない。
「どうだ?」
「これなら問題なさそう」
「なら成功か」
「そうみたい。これで次はスムーズに迷いなく、動けるの大きい」
分離出来た水は飲んだ感じ、味や匂いは特に問題もなさそう。
塩さえ分離出来れば、大きな害は多分無い。
「葉っぱは?」
「完全にボロボロだね」
綺麗な緑色をしていた葉っぱの色が炭のように黒ずんでいる。
魔法の性質上、葉っぱに熱を貯め込む仕組みのせいで大きな負荷が掛かったのだろう。
水筒1つ分は持ったから充分。
ついでに、分離した際に生じた塩も入手。
塩は、色々と使えるからありがたい。
道中で汚れていない方の川に寄って、飲み水兼身体拭く用の水を回収出来た。
2体の地龍には、小屋まで鉱石を運んでもらった。
彼らは鉱石を置いた後、帰っていく。
彼らが、無事に帰れることを祈る。
「さて、今日は休みにしよう」
時間的に昼少し前と言ったところ、疲れを取るために今日は休みにしたい。
数日歩いて戦闘もした。
そして、帰りには鉱石類を抱えてた。
とんでもない労働だ。
これは、流石に休まないと身が持たない。
……あっ、その前に確認したいな
半龍化して空を飛び湖の反対側に移動する。
数日間、放置していた植物がどうなっているのか、確認をする。
離れている間は見れていないから無事に育っているか、分からない。
もし無事に育っていたら食べるのはあり。
「無事……ではないな。これは虫食われか」
葉っぱや果実類に不自然に穴が空いている。
ただ虫の姿は見えない。
しかし、昔森で見た事がある虫食われに状態が類似している。
白い果実とツタの植物以外に、その虫食われらしきものが見られる。
シクが現れて覗き込む。
「何かあったのか?」
「多分、虫に食われた。くっそ、害虫対策してなかったからなぁ」
育て始めてそれほど時間が経っていないとはいえ、これはショックが大きい。
油断が招いた事態だ。
虫のリスクについては、知っていた。
正直、時間はあった。
対策は幾つか立てられただろう。
だけど、しなかったから起きた。
……被害が無かったことで甘く見過ぎたか
「仕方あるまい。また育てれば良い」
「……そうだね。大量に生産する前で良かった。この被害ならすぐに取り返せる」
「虫であれば魔法で対策を作れる」
「害虫対策は虫を殺すではなく、近寄せない感じの奴を作りたいな」
まだ十分、取り返せるレベルの被害。
もっともこの調子では、今年中にしっかりと食べるのは難しそうだ。
そこは、残念に思う。
……一年中育てる環境を整えられたら……
一年中育てる仕組みが出来れば、時期を気にせずに試しながら作れる。
でも、僕にその知識は無い。
だから、少なくとも今年中は絶望的だ。
せめて、植物関係に詳しい人間が居れば何とかなりそうだけど。
「まぁ、今日は休もう」
小屋に戻って寝転がる。
スライムのように溶けているのかと、錯覚するくらいに力無く寝転がる。
この状態が楽だ。
それから、適当に過ごして夜に眠りについた。
翌日、朝起きた時、変な気だるさがあった。
「うん? 疲れが溜まってたのか? まぁいい」
僕は、鍛錬を始める。
ゴーレム5体との殴り合い。
ゴーレムとの鍛錬では、半龍化の動きを慣らすことが目的だ。
攻撃をウロコで防いで、力を込めて放った反撃の拳で殴り砕く。
ゴーレムは殴られた部位からヒビが入り、石の破片が飛び散る。
続けて、後ろに来ていたゴーレム相手に、飛び上がり回し蹴りを叩き込み首元を抉り破壊する。
「5体だとそこそこ良いな」
「時間」
「分かった」
戦闘訓練を続けていると、時間になったとシクが呼びに来た。
そして、魔法制作の時間は、虫食い対策の害虫対策の魔法を考え始めた。
害虫対策をしないとまた同じことを繰り返すことになるだろう。
それは避けたい。
違う事例で失敗をするならともかく、同じ失敗を繰り返すのは手間だ。
植物は虫食われはあるが、ひとまず観察を続ける。
翌日になり、来客があった。