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第116話 毒の使い方

 脅しが効かない理由、それをどうにか出来れば多分戦争を止められる。

 僕は小声でつぶやく。


「違和感がある」

「長く生き己の命に固執しなくなったか、それとも生き残る術を知っているのか」


 ……前者は怪しい、後者は……殺されそうになっていて生き残る術がある?


 再びオーラを確認する。

 しっかりとオーラが見える。

 土人形では無い。

 あの状態から生き残る術とは何か。

 僕は思考する。


「どうしたんじゃ? 殺さぬのか」


 地龍の王は、煽るように言ってくる。

 僕は無視をして考え続ける。

 カウンターで僕に攻撃をする仕組みがある、殺されない自信がある、攻撃を受けても死なない。

 この3つを僕は考えられた。

 1つ目、これなら行動に頷ける。

 止めたければ殺せと言った発言は、カウンターの為の仕組みなら正しい行動だ。

 本当に殺す気だったら、僕は間違いなく攻撃を仕掛けていた。


 2つ目、殺されない自信がある。

 これは有り得ない。

 状況的に、殺されない理由が無い。

 僕が同族を殺したくないという情報は、地龍は持っていないはずだ。

 隠してはいないけど、言いふらしてもいない。

 この説は無いとして見ていいだろう。


 3つ目、攻撃を受けても死なない。

 偽物では無いけれど、攻撃を防ぐ術や死なないほどに身体が強い。

 これは有り得る。

 剣の攻撃は受けたけれど、それは擬態の姿で尚且つ、不意打ちだ。

 地龍は元々、身体が強固なウロコに包まれている龍種だと聞いている。

 その上で、生き抜いてきただけの力がある。

 真正面からの攻撃なら、余裕で凌げるとしてもおかしくはない。


 ……この2つか。どちらも厄介だ。


 攻撃をしたらカウンターは、攻撃のリスクが高いからしたくない。

 頑丈の方は、突破出来るか分からない。

 どちらか分からない。

 その2つ以外の可能性もある。


「老体1体殺せないで敵陣に来るとはのぉ。愚かな程に甘いのぉ」

「殺せないなんて言ってないけど?」

「ならばなぜ殺さないのじゃ? 殺さないことこそ証拠じゃろう」

「それは」

「同じ龍種は同族じゃから殺せないなど甘い考えをしていてはのぉ」


 ……知ってる?


 僕が龍を殺さない理由を、地龍の王はどうやら知っているようだ。

 何処かで、その情報を聞いたのか。

 可能性があるとしたら、飛竜だろう。

 飛竜と地龍が近い関係であっても、そこまで不思議では無い。

 他だと心当たりは人間になるが、地龍に情報が流れるのは少し違和感がある。

 ただこれは、完全な擬態で人里に潜んで、情報を集めていると言うならわかる。


「人間からでも聞いた? 君ら完全な擬態出来るっぽいし人に紛れて」

「儂らがやる訳がなかろう」

「いやいや、長が引きこもりで卑怯卑劣の極みみたいな地龍ならやるでしょ」

「人間になぞ紛れるものか。儂らはそのような事はせぬ。舐めるのも大概にするんじゃ」


 この反応で人間に紛れて、情報を集めていた説は無くなった。

 どうやら、地龍はプライドが高いらしい。

 ならば飛竜と行きたいけれど、この様子だとそれも無さそうだ。

 なら、別の方法、僕を見ていた……は無い。

 そんな行動をあの監視役のオオカミが、見逃すとは思えない。


 ……そうなると、白龍がいた事を知っていたのも変ではあるか


 地龍の住処は、僕の拠点としている山からかなり離れている。

 それに僕は、山を出るのは今回が初めてだ。

 地龍と会ったこともない。

 それなら、可能性が新たに浮上した。


「協力者が居るな。僕の情報を知る誰かが」


 僕はわざと声に出して言う。

 地龍の王は、僅かに表情が変化する。

 ほんのわずかだが、確実に反応を示した。

 僕が白龍であり、同族を殺さないという理由を知っている存在。


「なら仕方がないか」


 僕の目が紫色に光る。

 こうなっては、交渉はできない。

 それなら、仕方がない。

 やりたくはなかった手を取る。


「なんじゃ……がごっ……」


 地龍の王が苦しみ始める。

 突然の事で、地龍の王も何が起きているのか理解出来ていない。

 まるで、致死性の毒に犯されているかのように苦しんでいる。

 苦しさか何かで呼吸がまともに出来ないのか、出るのは掠れた声だ。


「この毒は、即効性は持つけど、時間をかけて肉体を蝕む。つまり、ものすごく苦しく死ぬ」


 2種類あったうちのもう片方の毒。

 これは、殺すための毒だ。

 苦しめて殺す。僕が嫌いな毒。


「こ、ろせな……いのじゃ……」


 苦しみに悶えながら、必死に声を出す。

 見ていて、気持ちのいい物ではない。


「殺すのは嫌だよ? でも殺せないとは言っていない。殺したくないだけなんだよ」


 僕は、あくまで人と龍を殺したくないだけ。

 だから、その気になれば殺せてしまう。

 これから地龍が起こす戦争で生じるであろう被害に比べたら、地龍の王1体を殺すだけなら抵抗感は少ない。

 戦争になれば、おそらくは多くの地龍を手にかける事になる。

 殺すなら、数は少ない方がいい。

 毒の効果を強める。


「ま、待て……と、止め……るの……じゃ……」

「止める? なんで?」

「ちが……せ……戦争……を……止め」

「本当か?」


 地龍の王は苦しそうにしながら、必死に頷く。

 僕は能力を解いて、毒を解除する。

 毒は残すことも出来るが、消すことも出来る。


「地龍の王よ。守れよ」

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