表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
白龍は祈り紡ぐ、異界最強を〜安寧望み描いて覇道を往く〜  作者: 代永 並木
自給自足と不穏な影

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

115/139

第115話 不意打ち

 足音が聞こえてくる。

 そして、その足音の主は話し始める。


「死んではおらぬか。白色の蛇龍は使えるからのぉ。手足の1、2本であれば潰しても良いが」


 地龍の王が、近付いてきているようだ。

 油断しているように感じるが、下手に動けばバレるので確認はできない。

 僕の左目が、僅かに紫色に光る。

 地龍の王は土の棘を消す。

 僕は、支えを失い地面に倒れ込む。

 僕の頭を、何かで突く。

 動くかの確認だろうか、僕は静かに待つ。

 ここで動いては、作戦失敗だ。


「まさか、単身で襲撃をするとはのぉ。あの2人には褒美をやらねばな。儂らは蛇龍を手に入れ、神狼族を潰し勢力を伸ばす」


 はっははと、勝ちを確信して笑い始める。

 まだ戦争が始まっていないのに、勝ちを確信している所、神狼族に勝てる手を何か持っているのだろう。

 止めに来て、正解だった。


 ……そろそろかな


 地龍の王の笑い声が聞こえている間に、チラッと目を開けて姿を確認した。

 今、ちょうど視線を僕から離している。

 老体の男性の姿をしている。

 龍が歳をとると擬態の方でも、歳をとる仕組みなのだろうか。


 それは今は良い。今確実に大きな隙が生じている。

 オーラを見ても、偽物ではなく地龍の王本人。


 作戦の準備も整った。

 無警戒で近づいてきてくれたから、他の手も使えた。今が絶好のチャンス、逃す手はない。

 剣に魔力を込める。

 目が黄色に光る。


「がふっ……な、んじゃ……と」


 僕は、素早く立ち上がり剣を腹に突き立てる。

 油断していた地龍の王は、回避も防御も出来ずに剣が突き刺さった。

 傷口から血が流れ、血を吐く。

 相当のダメージとなったのか、よろめく。


「油断大敵だ、ご老体」

「じゃが、この程度……」


 地龍の王は、杖のような物を振るう。

 回避すると剣が腹に刺さったまま、地龍の王は飛び退いて距離を取った。


「で済むわけないだろ!」


 後ろに飛び退いた地龍の王に、追撃をする。

 当然、こんなチャンス逃すわけが無い。

 魔力で身体強化能力を強化している僕は、素早く突き刺さっている剣の柄を足で叩く。

 そして、力の限り足を振り切る。

 胴体に深く剣が突き刺さる。


「がっ……」


 地龍の王ごと吹き飛ばす。

 蹴られた地龍の王は、壁に激突する。

 あれなら、かなり良いダメージだろう。


「おっ、結構良いダメージ、降参するなら今のうちだよ! ご老体」

「若造が……舐めるでないわ!」


 土の柱や棘が四方から襲いかかってくる。

 全ての攻撃に、魔力が込められている。


 ……魔力を込めたか


「ゴーレム!」


 倒れた振りをした時から、停止していたゴーレムを動かして対応させる。

 攻撃を防ぎ、砕いていく。

 僕は、落ち着いて拳を振るって砕く。

 想定していた攻撃だ。

 大振りの蹴りで柱を天井まで蹴り飛ばして、裏拳で棘の先端を粉砕する。


「捌ききれないな。自然の原理よ、高らかにその力を鳴らせ。走れ! 雷閃」


 詠唱し発動させる。

 複数の雷が部屋中を駆け巡る。

 土の棘を、柱を貫き駆け抜けた。

 短い詠唱である雷閃なら、即座に使える。

 魔法や拳、蹴りで攻撃を捌いていると、僕の胴体に土の棘が1つ、命中した。

 捌き切れなかったようだ。


「残念、効かない」

「なんじゃと……」


 僕の身体は、攻撃を受けてもほぼ無傷だ。

 破けた服の隙間から、純白のウロコが見える。

 仕掛けは凄い簡単。

 土の攻撃を受ける前に胴体にも、ウロコを生やして防いでいた。

 並の攻撃なら、ビクともしない蛇龍のウロコ。

 半龍化状態でウロコを生やせるのは、別に両腕だけじゃない。

 作戦でわざと攻撃を受ける時に、ダメージを受けては意味が無い。


 次々と、襲いかかってくる土の攻撃を僕はゴーレムと協力して、全て打ち砕く。


 ……本気でこれ? なら弱体化してるか


 恐らく、地龍の王は老化で弱体化している。

 強い龍がこの程度なわけが無い。

 良かった。万全な状態じゃなくて、万全だったらこの作戦も通じたか分からない。


「戦争を止めて、長なら出来るでしょ?」


 攻撃で破けたマントを消す。

 このマントは、無傷な事を隠す為の物だったのでもう必要ない。

 追い詰めたから、目的を言う。

 長である地龍の王に、戦争を止めさせる。

 止めるのに確実な手。


「ほっほほ、止める訳がなかろう。止めたくば殺してみせよ。出来ねば戦争は止まらぬぞ」

「そうか」


 魔力を込めて拳を握り、大きく振りかぶる。

 脅しのつもりだけど、殺せるであろう程度の力を込めて構える。


 ……なんだ?


 地龍の王は、平然としている。

 妙なくらいに平然としていて、抵抗もしない。

 今、自分が死にかけていると言うのに、この反応はおかしい。

 隠れ卑怯な戦術も使うような生にしがみついているような奴が、多くの時代を生き抜いた地龍の王がこの程度で死を受け入れる?

 それは変だ。


 ……こいつは偽物か? いや、にしては強いか


 影武者にしては、強く感じる。

 あの戦術も使い慣れている印象があった。

 本物だと感じる。偽物だとしたら、本物は何処にいるのか見当もつかないから困る。

 拳を引く。


「なんじゃ、殺さないのか。同族は殺せぬか?」

「…………」


 僕は見張りながら考える。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ