第108話 洞窟の入口
森を進んでいく。
ゴーレムが接近してきた魔物を殴り飛ばす。
順調に進んでいると、動物を見つけた。
黒いモヤを纏っていないことから一目で、魔物じゃないと分かる。
……魔物が消滅するタイプだから、確定で居るとは思ってたけど動物だ。狩りたいけど我慢
今回は動物狩りの為に、ここに来た訳じゃない。だから、見逃す。
歩き続けて日が暮れてきた。
すぐにテントを立てる。
それから、寝る前の準備でササッ、と出来る事を済ませておく。
「うーん、やっぱり慣れないなぁ。しゃがんだ方が良かったか」
……水の中なら考えなくて済むのに……
ひんやりとした湿り気を感じながら、シクの居る焚き火がある場所に戻る。
「戻ったか。良い感じに焼けている」
「おっ、本当だ。良い匂い」
焼けた果実の良い匂いが鼻腔をくすぐる。
「早くしないと焦げる」
「確かに、焦げたら勿体ない」
火の近くに座って乾かしながら温まる。
そして、焼いた果実を食べる。
焼く前に甘い塩の果実の粉末を軽くまぶしていた事で、果実の甘さと塩っけが足されて果実の旨みが増しているのが分かる。
粉末自体も火で焼いたことで、さらに風味が増している気がした。
食事を終えて、テントの中に入る。
シクの言う通り、森の中は平原よりも涼しい。
テント内の温度もかなり違う。
……これならこのままでもいいかな
寝苦しくはならなそうなので着崩さずに、寝具を使い眠りにつく。
翌朝
目を覚まして手馴れた動きで準備をする。
3回目となり、もう慣れてきた。説明書も読まずにササッと行っていく。
森を歩き、炎とゴーレムで接近してきた魔物を殲滅していく。
魔物は奥に進む事に種類が変わるが、特段強い印象は受けない。
炎とゴーレムの攻撃で楽々倒せている。
突っ込んできた魔物を、ゴーレムの拳が完璧に捉えて殴り飛ばす姿は爽快感すらある。
……この調子なら体力温存出来そう
ゴーレムに攻撃の殆ど任せて、体力の温存を行う。
ゴーレムで対応出来ているから、わざわざ僕が出しゃばる必要が無い。
「良いペース?」
「良いペース、体力の温存も出来ている」
「思ったより岩のゴーレムが活躍してる」
「弱く感じていたのは、相手が悪かっただけで強い部類に入る」
「あぁ、それは確かに」
ゴーレムを使った戦闘自体は多くは無い。
ただ、飛竜やら元英雄やら強い相手をしてるせいで弱い認識がついてしまった。
元英雄に関しては、本当に相手が悪かった。
「このままゴーレムに戦闘任せられるかな」
「相当厄介な敵でも出てこなければ問題ない」
「地龍とか?」
「そうだな。地龍相手は厳しい」
「会いたくないなぁ。最悪接近がバレるし」
地龍に気づかれて、報告されると厄介だ。
そうなると、計画通りには行かなくなる。
本当に避けたい自体。
「その前に倒せば良い」
「騒ぎで気づかれるでしょ。そんな一瞬で戦闘不能に追い込めるとは思えないし」
地龍は硬いらしいから、倒すのは時間がかかってしまうだろう。
硬いとは聞いていても、実際がどのくらいの硬さか、知らないことも理由にある。
硬いと思って本気で戦って、致命傷を負わせたとなると笑えない。
「殺す気なら可能」
「その気がないからこんな事してるんだよ」
殺す気があったらこんな面倒な事はせず、伝言役の2人をボコったり、戦争になったら理想郷と反理想郷のコンボで殲滅する。
硬い装甲を持つ相手でもあの爆撃を耐え切るのは至難なはず。
僕にその気がないから今、わざわざこんな危険を犯してるのだ。
そして、1日の時が経って、夕方には目的地に着いた。
「あそこ? ゴーレム離れて」
ちょっと離れた木々の上に陣取って、洞窟の入口を確認する。
ゴーレムは僕の指示に従い、周囲に散開する。
ゴーレムは大きいから、1箇所に纏まっていると気づかれやすい。
洞窟の入口は人間サイズでは無い、かなり大きいサイズの入口だ。
あれが地龍サイズの大きさなのだろうか。
だとしたら、飛竜よりは小さいのだろうと、サイズ感が何となく分かる。
「そう、あれが地龍が住む洞窟」
「あの中かぁ。でもまだだよね?」
「まだ地龍どもが出てきていない。この周囲でしばらく待つ。食料は?」
「補充したから問題なし」
この森の中で、果実や植物を回収している。
山と植生が変わっていない為、食べられる物がすぐに分かった。
数日待つなら、食料が無くなる可能性があったから助かった。
これで数日は持つ。
「それじゃどこで待機する?」
「洞窟の入口が監視でして比較的見つかりづらいところ……あの辺だな」
シクは、太い木が生えているところを指差す。
太い木は、見た限り余裕で身を隠れる。
地龍がいないことを確認して、素早く静かに降りる。
そして、コソコソと太い木の方へ移動をする。
ゴーレムは、待機させて形を変えて少しずつ操作して合流させる。
……ゴーレムは崩して、周囲に置いておこう
荷物を太い木の近くの草むらに置く。
岩を分解して、周囲の草木に隠す。
ここからは戦闘よりも隠密が重要になる。
ゴーレムの出番は、一先ず終わり。
地龍達が戦争の為に、出てくるまで待つ。