第107話 森の中
目を覚まして、持ってきている果実を食べて軽く食事を取る。
そして、朝の支度をササッと済ませる。
今日はすぐに森に向かって、森の奥に進む。
だから、早い出発が良い。
「テント片付いた」
「こっちも荷物纏め終えた」
荷物をゴーレムに預けて準備を終えた。
森へ向かう。
「森の魔物は平原より強い?」
「種によるが強い、統率は取れていないが数で襲ってくる事もある」
「それは厄介だなぁ」
「ただ森の中ならば木々で視界が遮られる。剣を使わなくとも良い」
「あぁ、そうか。確かに」
平原だと周りに人がいるから、いつ見られてもおかしくなかった。
だから、怪しまれないように剣で戦っていた。
だが、森の中となれば話が違う。
草や木が生い茂る森の中では、相当近くに居ないと、動きの詳細なんて確認出来ない。
つまり、不自然な行動をとっても問題ない。
これは、いい情報を聞いた。
しばらく歩き森の入り口に着く。
既に昼を過ぎている。
思っていたよりも結構、距離があった。
見た目は、山の森とあまり変わらない。
……あっ、見たことある植物だ。こっちのも確か山で生えてたかな
キョロキョロと草木を見ていると、山で見覚えのある植物を見つけた。
その隣の植物も山で見かけたことがあった。
どうやら、植生に大きな違いはないようだ。
……これなら、食べられる植物や果実を回収できそう
植生に違いがないのなら、森の中で足りなくなっても食料確保が出来る。
それは大きな情報だ。
「この森の奥に地龍の住処の洞窟がある」
「ここからすぐ?」
「いや、今のペースで2日程度かかる」
「2日かぁ」
2日と言えば、小屋からこの森まで歩いた距離と同じくらいだ。
この森はかなり広いようだ。
「そして、奥に進めば進むほど魔物の数が増え強い魔物が出てくる」
「うへぇ、地龍の住処付近は強いって事?」
「本気を出すほどでは無いが、意図した体力の温存は必要になる」
シクがわざわざ忠告をしたという事は、この森に出てくる魔物は平原の魔物のように楽には行かないぞ、という意味だろう。
一体一体が強い魔物と戦闘が多ければその分、体力を削られる。
地龍の王前で体力を削られるのは勘弁。
地龍の王は万全で勝てるか自体、不明なのだ。
体力を温存して切り抜けないとならない。
「体力温存かぁ」
「不要な戦闘は避けるや体力の消費が少ない戦い方をするなどやりようはある」
「それなら、ゴーレムと炎メインで行こうかな。能力なら体力の消費は少ない」
事前に能力を切りかえておく。
体力温存なら動き回る接近戦よりも、炎による殲滅の方が良い。
炎に関しては例え相手が弱くても、操作の精度の練習に使える。
そして、体力無尽蔵のゴーレム。
今は荷物運びがメインだけど、戦闘も出来る。
今稼働しているのは3体、2体分は1体のゴーレムに一部を混ぜて残りを抱えさせている。
物体操作に一度切りかえ、ゴーレムを2体作り出す。
これで3体のゴーレムが戦闘に回せる。予め戦闘の指示を出す。
そして、また炎に切り替える。
先に物体操作で、ゴーレムを作っておけばよかった。切り替えは楽だけど手間だ。
シクの案内の元、森の中を進んでいく。
周囲の草木から虫の声が聞こえる。
虫の声を聞くと、今自分が森の中に居ると言う感覚が一層強くなる。
……あの山だと虫の声しなかったけど……あそこはあまり声出すタイプの虫が居ないのかな
あの山は、おそらくは神狼族を中心に生態系が築かれている。
だから、他の場所とは違うのかもしれない。
異世界の生態系は全く分からないから、ただの憶測に過ぎない。
「来たか」
森の中から、何かが動く音が聞こえる。
音が近づいてきているから、草を掻き分けてこちらに向かってきていると分かる。
能力で軽く炎を出す。
……数は……3体くらいかな?
3方向から音がする。3方向だから、最低でも3体居ると見るべきだろう。
草を掻き分けた魔物の姿を捉えた。
平原で見た魔物とは見た目が違う。
即座に炎を叩き込んで焼く。
魔物は焼かれて地面を転がる。そして、すぐに動かなくなり崩れ魔石だけ残して消滅する。
他2方向から迫ってきていた魔物が、同時に襲いかかってくる。
しかし、ゴーレムに殴り飛ばされて消滅する。
一撃で仕留めていた。
「一撃か。良いね」
そのまま、森の奥に進んでいく。