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白龍は祈り紡ぐ、異界最強を〜安寧望み描いて覇道を往く〜  作者: 代永 並木
自給自足と不穏な影

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第106話 偶然の再会

 目を覚まして、僕はふわぁ、と欠伸をして大きく両手を上げる。


「寝れなかったか」

「寝れてはいるんだけど、ちょっと暑さで眠りが浅かったのかなぁ」


 暑さで寝苦しかったせいであまり、ちゃんと眠れた気がしない。

 寝ぼけた状態でテントから少し顔を出す。

 まだ少し暗い。

 テントの中に戻って、自分の捲れている服をパッパと、元に戻す。


「この暑さは平原超えるまで」

「なら今日も我慢かぁ。地龍の王と戦う前日にぐっすり眠れたら良いな」


 テント内で朝の支度、食事などを簡単に済ませてテントの外に出る。

 ゴーレムを見ると魔石を手に持っていた。

 どうやら夜に現れた魔物を倒していたようだ。


 ……魔物来てたか。問題なく倒せているか


 ゴーレムに損傷は見受けられない。

 出てきた魔物の強さは昼間と変わらないか、強くても少し強いくらいだろう。

 ゴーレムの力を借りて、テントを片付けていく。

 そして、目的の方向へ向かって歩く。


 それから直ぐに冒険者たちも起きて、テントをしまって、それぞれの行動をし始めている。


「あれ、これは……おっ、川だ」


 歩いていると、平原に下がっている部分があるのを見つけた。

 そこからは水音が聞こえて、上から覗き込むと小さな川が流れていた。

 上流側の方向を見ると、城壁の方から流れてきているようだ。


 ……顔洗ったり、水筒補充しようかな


 ゴーレムから水筒を受け取り、川で出来ることを済ませようと近づく。

 すると、シクに肩を掴まれて戻される。

 力が強く抵抗が出来ない。


 ……うぉっ!?


「待った」

「何か問題あった?」

「上流側に人が住む国がある」

「……あっ、そうか……あ、危なかった」


 シクの言葉にハッとする。

 城壁のある方からという事は、人々が生活している場所を経由しているという事だ。

 つまり、ほぼ確実に、生活排水がこの川に流されているのだ。

 汚い上、衛生面も最悪

 顔を洗うのも、飲み水にするのも危険な代物。


「川の方向と上流に何があるかの確認は怠るな」

「き、気をつけるよ。完全に油断してた」


 気を取り直して、進む。

 魔物が出てきたら、剣を抜いて切り裂いて楽々倒し歩き続ける。

 そして、歩き続けていると日が暮れてきた。


「そろそろテントを立てる」

「森見えてきたよ?」


 遠いけれど、行くであろう森は見えてきた。

 このまま進めば夜遅くにはなるけど、森に着きそうな距離だ。

 これなら森の中に行ってからテントを立てても良い気がする。


「慌てるな。あの森は魔物の巣窟だ」

「そ、巣窟……」


 巣窟と言われると、自然と足が止まる。


「体力の余裕を持って入り一気に奥まで進む」

「なるほど、巣窟ならそれが良いか」


 シクの言葉に納得して、平原で野宿を行う。

 魔物の巣窟なら、出来るだけ万全で入った方が良い。弱くとも数が多いと厄介。

 テントの準備は、昨日と同様の作業なので、スムーズに出来る。

 ゴーレムの力を使いながら手早く立てていく。


「あれ、悠真兄?」

「うん? 大和か。偶然だな」


 後ろから声がした。

 それも僕の名前を呼んでいる。振り向くと大和が立っていた。

 前回、会った時と同じ格好をしている。

 平原に用でもあったのだろうか。


「悠真兄はこんなところで何を?」

「ちょっと、用事があって遠出の途中、そっちは……訓練か何か?」


 チラッ、と後ろを見ると、何人かの騎士がせっせと荷物を抱えてテントを立てている。

 忙しそうだから、大和も手伝うべきじゃないかと思いながらも会話に戻る。


「騎士達に混じって魔物の実戦をしてたんだ。騎士の技を学んでるところ」

「なるほど、確かに騎士の技は覚え得だな」


 騎士の技は、おそらくは騎士内で統一された武術や剣術の類だろう。

 それも数十年、数百年の単位で改良を積み重ねてきた物だと考えられる。

 戦いの為の技で師匠になれる人も多い。素人が戦いを覚えるのなら、良い選択だろう。


「中で少し話そう」

「わ、分かった。おぉ、立派なテント」

「これは商人から買ったテント」


 作り終えたテントの中に入る。

 大和もテントに入れて、話をする。

 特に話す内容はないけれど、世間話や最近会った出来事を聞きたい。


 僕は雑に片膝を立てて、脚を開いて胡座のような体勢で床に座り込む。

 男の時からの楽な体勢


 ……ピッタリにし過ぎたかな


 このショートパンツは、自分の身体のサイズに合わせてある。

 胡座で座ると余計身体の線にピッタリ合い、ちょっと締めつけを感じる。

 でも、この程度なら男の時の方が全然きつかったから問題はない。

 動いてる時は座る時ほどの締めつけはないし。

 大和は胡座で普通に座る。


「ほう、嶺二はやっぱ凄いのか」

「詳しく聞いてないけど、元々武芸者なんだろうね。武器の扱いが上手いし戦闘技術も高い」

「まぁ、あっちでも剣術、槍術は存在するからな。あっ、魔族の時は大丈夫だったのか?」


 魔族が襲ってきた時、嶺二は集落の防衛をしていて、国、王都とでも呼べばいいか、そこの防衛には参加していなかった。


「小さい魔族だけだったから何とか凌げた。負傷者は出たけど死者は居なかったかな」

「死者なしか、結構な規模だったけど凄いな」


 大きな戦闘は死者が出る。

 小さい魔族は強くはなかったけれど、数が多いから数で押されていてもおかしくなかった。

 その戦いで死者が出ないのは凄い事だ。


「冒険者も総動員で対応してたから」

「冒険者の数多いんだったな」


 ……暑い


 今日も平原でのテントの為、暑い。

 タンクトップの襟元を摘み大きく仰ぐ。

 仰ぐことで、風が中に入り涼しい。

 大和は僕のその姿を軽く見た後、なんとも言えない表情をしている。

 その後の大和の視線は宙を浮いている。

 あちらの世界だと、暑い時によくしていた行動だ。別に気にするような事は無い。


「どうした?」

「いや、何も変わらないんだなと思って」

「人はそうそう変わらない物だ」

「まぁ、そうか」


 それから大和と適当に雑談をする。

 その途中に準備が終わったのか、騎士の1人が大和を呼びに来た。


「勇者様、雑談中すみません。支度が終わりましたので呼びに来ました」

「あっ、分かりました。それじゃ悠真兄」

「おう、訓練、気をつけてな」


 大和は、騎士達の方に帰っていく。

 僕はちょうどいい時間と考えて、テント内で寝る準備を進める。

 今日も暑いので、予め服を捲りずらして眠りにつく。


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