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102話 戦闘用の服

 それから半月以上、時が過ぎた。

 攻撃魔法の良い案は思いつかなかった。だから特訓に力を注いでいた。

 特訓で疲れた際に、成長した植物をちまちま食べる。

 自分で育ててる美味しい物は良い。

 この間は、戦闘の話ですり減った精神が回復している気がする。


 シクの教えで鍛え続けて、何とか求めていたギリギリのラインの能力強化が出来た。

 これくらいあれば、弱体化していない地龍の王と何とか戦えると、シクが言っていたライン。

 勝てるではなく、あくまで戦える強さ。


 ……あの作戦が思い通りに行けば……勝てるかも、だけど嫌な予感が拭えないなぁ


 嫌な予感は、まだ消えていない。

 そこが心配だ。


「今から出発したら、おそらく戦争開始直前には地龍の住処に着く」

「狙うは地龍の大半が住処から離れた後だね」

「そうだ、私たちの目的は地龍の群れではなく、地龍の王だ。他は気にするな」

「分かってる。戦闘は避けて王の元に」


 僕は、地龍の王に奇襲をかける。

 神狼族との戦争の為に、若い地龍が住処から離れたところを狙う。

 地龍の群れと戦えば勝ち目はない。だから地龍の王のみを倒す作戦。


 シクの言う通り今日、地龍の住処に向かう。

 まだ住処に着くまでは、時間があるというのに緊張し恐怖を感じる。

 深呼吸をして緊張をゆっくりと解す。

 今、この調子だと戦闘なんて出来ない。


 服装も戦闘用に変更した

 お腹が出るほど短いタンクトップ型とショートパンツ型、服による動きづらさを減らした、動きやすさを重視した格好だ。

 靴も動きやすさ重視のスポーツシューズ。

 普段着てる物より露出が高いからその分、肌に風が当たり涼しい。タンクトップの隙間から風が入り、肌を優しく撫でる。

 露出高めとは言えど、隠すべきところは、しっかりと隠しているから恥ずかしさは無い。


 ……この身体は身長そこそこあるから似合ってるな。まぁ、ちょっと女性らしい気がする


 普段の中性的な格好とは、また違った雰囲気。

 自画自賛ではあるのだけど、この身体に似合っている格好で気に入ってる。

 着せ替えの感覚になるけれど、女性系の服も良いかもしれない。


 ……少し気になるけど、この方が動きやすい。異世界来てからは、こっちの感覚の方が慣れてる


 上下共に普段より締め付けがない分、開放感がある。


 ……見えないしこれ結構、良いかも


「その格好で戦う気?」

「そのつもり、動きづらさがないからね。相手の攻撃を躱す時に一瞬の遅れは命取り」

「然り、戦は一瞬で生死を分ける。札は? 治療の魔法はなければ厳しいぞ」

「その心配は無用、札はここ」


 僕は待ってましたと言わんばかりに、ショートパンツの横側にある小さなバックを軽く叩く。

 普段よりも布面積が少ない為、無貌の変化規模に余裕があった。

 その為、札を入れる用のバックを、ショートパンツに備え付けたのだ。

 左右に1つずつあり、その中に札を入れた。


「そこか」

「これなら戦闘中に出すのも楽、それに位置を覚えやすいからね」

「確かに、それならば使いやすいか」


 ゴーレムに旅に必要な荷物を持たせてから、忘れ物ないかを確認して出発する。

 シクも同行するらしい、ただ戦闘には参加しないと言っていた。

 シクは間違いなく僕より強いから参加してくれたらだいぶ助かったのだけど、残念。


「ゴーレムは6体まで……1体は集落だから戦闘で使えるのは5体、心許ないな」

「勇者の男が言っていた鉱石は、地龍の王との戦いには間に合わなかったな」

「そのようだね。仕方ない。ゴーレム5体分の鉱石なんて勇者とはいえ、そんなすぐには集められないでしょ」


 嶺二が言っていた集落のお礼の鉱石は届いていない。

 鉱石資源が豊富な国とは言っても、そう簡単に集められる量では無いし、それを龍に渡すのは上の人らが相当渋るだろう。

 鉱石でゴーレムを作れたら大幅パワーアップだったのは間違いない。

 確実に防御力も、攻撃力も、岩とは比べ物にはならない戦力になっていた。

 特訓でゴーレムを操れる量が増えただけ、良いと考えるしかない。


 ……基本は再生頼りの防御と囮かな


 移動は早足、戦争で出払ったタイミングとは言え、接敵する前に片をつける必要がある。

 早めに着いて好機を待つ。

 集落の近くを、通らないように遠回しで進む。

 近くを通ったら、騒ぎになってしまう。


 ……山出るの初めてなんだよなぁ


 目覚めてから、ずっと僕はこの山の中に居た。

 そして今日、初めて山を出る。

 それも種族間の戦争を止めるためだ。

 とんでもない話だ、本来なら僕は絶対にしない事で恐ろしい事だ。

 だけど、仕方がない。

 これは、僕が招いたと言えるのだ。なら止めるのは僕の仕事だ。

 特訓もした、魔法も作った、準備もした、覚悟も出来ている。


 それから地龍の住処に向かう為に、山の外に出た。

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