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高橋衛の家
信二と七之助は、友人の高橋衛の家に到着した。家の前では、衛が大声で泣いていた。安楽死の施設職員たちが衛の両親を迎えに来ており、両親は大きな布袋を被せられていた。
「衛…」信二が静かに声をかけると、衛は涙ぐんだ目で振り返った。「信二、七之助…僕、どうしたらいいのかわからないよ…」
七之助は無言で衛の肩に手を置いた。信二も言葉が見つからず、ただ黙ってその場に立ち尽くしていた。
職員たちは淡々と作業を進め、衛の両親を車に乗せていった。その光景を見ていると、信二も胸が締め付けられる思いだった。彼は衛の痛みに共感しながらも、自分には何もできない無力さを感じていた。
「衛、俺たちはここにいるよ。何があっても、君のそばにいるからね。」信二はそう言って、衛の肩を強く握った。
衛は涙を拭いながら、信二と七之助に感謝の気持ちを込めて頷いた。彼の心にはまだ多くの痛みと悲しみが残っていたが、友人たちの存在が少しでも慰めになってくれることを願っていた。