日本政府
後藤信二(コンビニ店員 40歳)は、夕焼けテレビを点けると、鈴木曽利男総理大臣が記者会見をしていた。
『国民の皆さんはもう、お分かりだと思います。えー!明日から75歳で終了年齢という法律が施行されます。えーとですね、この法律により、国民は75歳になると、一定のプロセスを経て「終了」することが義務付けられます。これは、高齢化社会の問題を解決するために、避けて通れない道であると考えています。』
後藤信二は、テレビの前で言葉を失った。彼の母親がちょうど75歳の誕生日を迎えるのは来月だった。信二は心の中で何かが崩れ落ちる音を感じた。
『この法律は、多くの議論と検討を重ねた結果です。高齢者の生活の質を向上させるための施策も同時に進めてまいります。国民の皆さんがより良い未来を築けるよう、引き続き努力してまいります。』
鈴木曽利男総理大臣の言葉は続いていたが、信二はそれ以上聞く気になれなかった。彼はテレビを消し、深いため息をついた。
「どうしてこんなことに…」
信二は頭を抱え、どうするべきか考え始めた。この法律が施行されることで、彼の家族はどうなるのか、友人や同僚はどうなってしまうのか。彼の心には不安と恐怖が広がっていった。
その夜、信二は眠れなかった。次の日、彼はいつものようにコンビニで働きながらも、心ここにあらずの状態だった。彼の頭の中には、母親の顔が浮かんでいた。
「何かできることはないのだろうか?」信二は何度も自問自答を繰り返した。だが、答えは見つからなかった。
その日、信二は母親の家を訪れた。母親は彼を迎え入れ、いつものように温かい笑顔を見せた。
「お母さん…」信二は言葉を詰まらせた。
「どうしたの、信二?」母親は心配そうに尋ねた。
信二は深呼吸をして、母親に新しい法律のことを話した。母親はしばらく黙って聞いていたが、最後には静かにうなずいた。
「分かっているわ、信二。この国のために、私たちも何かをしなければならない時が来たのね。」
信二は涙をこらえながら、母親の手を握りしめた。彼は何があっても母親を守りたいという強い決意を胸に抱いた。