包丁の音と味噌汁の匂いで目覚める朝
その他/詩/連載形式 というジャンルが過疎りすぎてるのか、一時的に週間3位とかいう表彰台の末席を汚しております。嬉しいやら悲しいやら。
ワンルーム
味噌汁作る
僕の背に
『いい匂いだね』と
君は寝言で
ワンルームでの同棲というのは、何かと不便が多い。
もういろいろ隠すような間柄でないとはいえ、最低限のプライバシーはお互い尊重したい。
それに、ケンカなんかをしてしまった日には、地獄のような空気が延々と狭い室内に漂い続けることになる。
でも、いいこともたくさんある。
顔が見たくなったらすぐそこに居る。
くだらない話でも延々続けていられる。
……きっとこれは、遠距離だった反動だろう。
僕たちは、何があっても一緒に居続けたい。
今だってほら、ケンカしてるのにいつも通り、僕は彼女のために朝食を作っている。
炊き立てのご飯と味噌汁と、少しのおかず。
30分もすれば、いつも通り食卓で向かい合っている。
背後から衣擦れの音がした。
仕方ない、いくら静かにしていても、もうじき彼女が起きる時間だ。
なにかモゴモゴと、寝言を呟いているようだ。
いい匂い、だってさ。
寝てても食い意地が張ってるのか、この女性は。
まったく、可愛いすぎてどうにかなりそうだ。
彼女の額にひとつキスをして、僕は朝食の仕上げに戻る。
ああ、僕はなんて幸せなんだろう。