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当世風の百鬼夜行
俯いて
夜道を歩く
その顔は
まるで人魂
百鬼夜行
仕事の締め切りが見えてくる時期は、どうにも煮詰まってしまう。
画面脇の時計を見ると、すでに日付が変わってしまっていた。
前回の休憩から2時間は経ってしまっている。
パソコンとの睨み合いを一時休戦して、ひとつ大きく背伸びをしてから台所へ。
残り少ない粉コーヒーの在庫に顔をしかめながら、ケトルで湯を多めに沸かす。
普段より長いそれを待つ間、ベランダに出て夜風に当たることにした。
街を見下ろすと、ちょうど終電の時間だったのか、駅の方向から人影がまとまって歩いてきた。
皆一様にスマホを眺めていて、画面に照らされた彼らの顔は、街頭の少ない夜道に青白く浮かび上がっている。
まるで百鬼夜行みたいだな。
人の流れを眺めながらぼんやりしていたら、背後でヒューとケトルが鳴った。
室内を振り返って、はたと気づいた。
暗い室内、モニターの青白い光。
少々間抜けではあるものの、効果音までついている。
ひょっとしたらわたしも、幽霊の一員だったのかもしれない。
幽霊は幽霊らしく、百鬼夜行の列に戻るとしようか。