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シーツは名残雪
昼下がり
あなたの名残で
目を覚ます
ホワイトムスクと
痺れた左手
私が起きると、彼女はもう仕事に出てしまっていた。
壁の掛け時計を見れば、すでに正午すぎ。
休日とはいえ、少々寝過ぎたかもしれない。
ベッドから体を起こそうとしたところで初めて、左腕が痺れていることに気が付いた。
彼女に腕枕をしたまま話し込んで、そのまま眠ってしまったようだ。
そのことを思い出したら、なんだか肩まで凝り固まっているような気がしてきた。
痺れに耐えながら肩をぐるぐる回していると、甘い香りが私をふわりと包み込んだ。
彼女が寝る前、好んで吹いている香水の香りだ。
最近はこの香りを嗅ぐだけで、ゆっくりと眠気が襲ってくるようになってしまった。
危うく二度寝に入りそうになった頭を左右に振って、ベッドから勢いよく立ち上がる。
ことしは暖冬だとニュースは言うが、素足で触れる12月の空気はいつもと変わらず底冷えする。
私はひとつ深呼吸をして肺に冷気を入れてから、シーツの雪原に残された足跡を均しにかかった。