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舟をこぐ
バスの中
あなたと二人
舟をこぐ
睡魔の船頭
塩素の香り
プールで泳いだ後にくる眠気ほど、抗いがたいものはない。
体にまとわりつく夏の空気が、いつもよりもやけに重く、粘り気を帯びているように感じる。
それでいて、蒸し暑さすら気にならなくなるほどに強烈な眠気。
水泳の授業を終えた直後の座学を、寝ずに終えられた記憶が私にはほとんどない。
たとえ気になるあの子と二人、市民プールで遊んだ帰りのバスでも、あの甘い眠気の誘惑に抗うのは難しいんじゃないだろうか。
すぐ隣に座るお互いの体温と、微かに残った塩素の匂いを感じながら、きっと終点まで乗り過ごしてしまう。
何かの拍子にどちらかが起きても、もう一人を起こす気が起こらないほどの心地よい気怠さ。