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運命の糸を絡ませてやる

作者: 一色 良薬

「懲りない女」

 二階席からバーカウンターで酔い潰れている、みっともない女を冷ややかな眼差しで見つめた。

 どうせまたしょうもない男に捕まって、しょうもない理由でフラれて、しょうもない男のために涙を流しているのだろう。

「あんなオトコ、ハルが泣く未来しか見えないわ」

 さんざん忠告したアタシに「絶対に私の運命の人だもん!」なんて夢見る夢子ちゃんみたいな捨て台詞まで吐いて掴みとったくせに。

(これで何回目よ。そう簡単に“運命の人”が見つかるワケないじゃない)

 いい経験。毎回アタシが慰めて甘やかしてあげていたけどもう助けてあげない。せいぜいアタシの勘を疑ったことを後悔すればいいわ。

「ミヤさぁん。何見ているんですかぁ? せっかくクラブに来たんだから飲みましょうよぉ」

「あらやだぁ。ぼーっとしちゃったみたい。今日はじゃんじゃん飲んじゃうわよ」

 グラスの中で揺らめくアルコールを口の中に満たす。弾ける泡の強さに快感を覚える後ろで、ハルが一人で泣いていると思うとまた興奮した。

「ミヤさんってバイなんでしたっけぇ」

「んふふ、そうよ。でもだからって誰でもいいわけじゃないのよ」

「えー! 何それ意味深~! 難攻不落のミヤさんがぞっこんの人とか気になるぅ!」

「ちょっと! ちょっと~? アタシは虜にしてナンボよ? 私が盲目になる相手なんかいるワケないじゃない!」

 ──ミヤ! 聞いて、聞いて! こないだ合コンで知り合った人と付き合うことになったの! 今度こそ絶対運命の人!

 馬鹿で懲りない女はこっちの気も知りもしないで“運命”を見せつけてくる。

 アンタの馬鹿げた夢物語に付き合える人間なんてアタシしかいないこと、そろそろ自覚したらどうなの?

 でも言ってあげない。アンタがアタシを好きになるまで嫌ってほど運命の糸を絡ませてあげる。

 がんじがらめになったアンタが「好き」って言うまで、助けてあげないわ。

 ちゃんと選んでくれたら、糸に絡んだ綺麗なアンタを食べてあげる。

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