第104話
どうしようかな…
本当は話を先に進めたいけど、私を怪訝な目で見てくる涼ちゃんとずっと怯えている水瀬さん、汗をかきながら気丈に振舞っている凜が気になって前に進めない。
でも、私も確信がないから困っている。お化け屋敷で見たものは本当に幽霊なのか、勘違いなのか…真実が分からないのだ。
言っておくけど、私も怖いんだからね!ホラー映画は好きだけど、お化け屋敷は苦手だし(意外に平気だったけど)、幽霊などは画面の中で見るから客観的に楽しめる。
あれ?さっき…手を振っていた白い服を着た女の子がまだこっちを向いて手を振っている。さっきは疲れから頭が回らなかったけど、あの子が…お化け屋敷にいた子だよね?
もしそうだったら、スタッフ確定だし本当の幽霊 or 〇子ではなかったことになる。
ここまで確実にハッキリと見えている幽霊なんて存在しないし、顔はなぜかあんまり見えないけど姿はちゃんと見えるし。
きっと、そうだよね?お化け屋敷で幽霊を見るなんて物語としてはつまらないよ。
そうだ!白い服を着ているスタッフの女の子に協力をしてもらい、さっきの勘違いを解けばいいのだ。さっき、私が見たのは幽霊ではなくスタッフですって。
私は女の子に話しかけるために歩き出す。でも、青ざめた顔をした凜に急に腕を掴まれ進まなくなった。
「凜、どうしたの?」
「どこいくの…?」
「スタッフさんの所」
「そんな人、どこにもいないよ…」
「いるよー。ほら、あそこにいるじゃん」
私はそっと白い服を着たスタッフの女の子の方を指で刺す。でも、凛が指を刺す方向を見ながら首をずっと振り怯えた顔をする。
「ちーちゃん…早くここから出よう」
「分かってるって。でも、スタッフの人に聞きたいことがあるから待って」
「普段は引っ込み思案だし、人見知り全開で陰の陰なのになんで今日は正反対の行動を取るのー。いつものちーちゃんじゃないよー」
うん?私、凜にさりげなく暴言を吐かれている?陰の陰って言ったよね?流石の私でも自分のことをそんな風に思ってなかったよ。
「なんか腹が立つからスタッフの人と話すまで絶対にここから出ない!」
「ちーちゃんー!」
意地っ張りモードに入った私は私にしがみつく凜を引きずりながら白い服を着たスタッフの元へ歩き出す。でも、凜がデカくて歩きずらい。意地でも私を離そうとしないし。
「ちょっと、凜!離して」
「やだー!ちーちゃんが闇の世界に行こうとしてるもん」
「闇の世界って…変なこと言わないでよ(厨二病みたいで恥ずかしい)」
「ひろ、そっちの世界に行っちゃダメ!」
えっ?水瀬さんまで変なことを言い出して参戦してきた。お陰でデカい2人にしがみつかれ私は歩くことができない。
「水瀬さん、離して下さい」
「やだー!ひろが太陽光を浴びれなくなる」
はぁ?どういうこと?
私は闇一族か!ってツッコミたくなるけどここは我慢だ。そもそも、太陽光を浴びれなくなるって言葉変だし、2人のせいで周りにいる人達から笑われている。
「2人とも離してー」
私の悲痛の思いはいつも空振りする。これが月族が主人公の物語であるけど、少しぐらいは太陽族が主人公の物語のように進めたい。
「千紘…美味しいチョコ食べたくない?」
「食べたい!」
「チョコのスイーツのお店があるよ」
「行こう!すぐに行こう!」
私はお化け屋敷で歩き、2人のデカいワンコのせいで体力を使い非常に疲れていた。
お化けよりチョコ。◯子よりチョコ。ホラーよりチョコ。真相究明よりチョコなのだ。
☆
「ちーちゃん、黒い靄がある方に行こうとしてたよね…」
「やっぱり、凜も見えてたの⁉不気味な黒い靄、あったよね!」
「佐倉さんも水瀬さんも見えていたんですね…見えてなかったのは千紘だけか。私達が止めなかったら本当に闇の世界に…」
☆
「チョコ最高ー!!!」
佐藤千紘が見えていたものは何なのか…
そして、佐倉凜・水瀬陽奈・野村涼子が見た黒い靄とは…
白い服を着た女の子は何者なのか…
幽霊?〇子?人間?
答えは闇の中に沈む。月族が主人公の物語にホラー要素を追加してはいけない。
この物語の主人公の佐藤千紘は月族の闇属性である。闇は闇を引き寄せる。
でも、次の話からはホラー要素なくなるよ。この物語のタイトルは「私の嫌いな最頂点の幼馴染」なのだ。青春の話なの!