8話 脳内カーニバル
実はマーガレットは、エレナとアークのことを前々から知っていた。
仲の良い王子と婚約者は、よく新聞記事にも取り上げられて、遠くの領地にまで知れ渡っていた憧れの2人だった。
マーガレットにも婚約者がいるのだが、10歳歳上の相手で、最近あまり会いにも来てくれない。
だから、2人の新聞の絵姿がとてもうらやましく、憧れていて、もう何年も2人の推し活をしていた。
新聞記事は、切り抜いてその辺に飾ったり、丁重に保管したり、2人が近くまで視察に訪れたと聞いたら、急いで駆けつけ遠くから見ていたり。
とにかく2人を推すことに没頭していたのだ。
その2人が自分と同い年で、魔法学園に入ると聞いたものだから、マーガレットは魔力量が多いことをそれまでずっと面倒で隠していたのを、試験でここぞとばかりに発揮して、この最上位のクラスに入ることができた。
たくさんクラスがある中で、王子ならきっと最上位クラスに入るはず。エレナはどうなるかわからなかったが、王子と同じクラスに居れば、必ずエレナは王子に会いに来るだろうと思い、試験で思い切り力を出し切った。
これでもかというくらいに出し切ったせいで、事故は起きそうになるわ、力尽きて倒れて運ばれてしまうわで、もうダメかと思ったが、入学式の時に張り出されていたクラス発表を見た時は飛び上がって喜んだ。
しかも、自分が最上位クラスに入れただけではなく、王子はもちろんのこと、同じクラスにエレナもいたのだから、もう喜びで気を失いそうになる程だった。
(推しのカップルを目の前で毎日見れるなんて!)
と喜びの悲鳴を上げていたら、
なんと!ナント!
(隣の席がエレナ様だなんて!)
マーガレットは鼻血が出そうになるのをなんとか堪えながら、勇気を振り絞って、ついに声をかけたのだった。
だから、お友達になってと頼まれた上に、敬語もなし、名前も呼び捨てでいいと言われ、マーガレットの脳内でカーニバルが発生したのは仕方のないことだった。