7話初めての友人
入学2日目
「ねぇ、エレナ?何か、クラブには入るの?」
フェリスが休憩時間、机に本を広げて読んでいたエレナのそばへ来て声をかけた。
「…クラブかぁ。そうね…もうすぐ決めないといけないのよね?
私、今までずっと王妃教育ばかりだったから、お友達があまりいなくて…
できれば女の子がたくさんいるクラブに入りたいと思ってるの」
「ああ、それはいい!とてもいい!」
後から来たアークがエレナの考えに大賛成した。
「はぁ、また出たよ。ほんとに兄上の過保護には困ったものだね?エレナ?」
「ふふっ。そんなことないですよ?私、どんなアーク様も大好きですから」
聞き耳を立てていた女生徒たちから、悲鳴が沸き上がる。
「なっ、エレナ、…ちょっとおいで」
と、エレナの手を掴んで教室から出ようとしたアークは耳まで赤くなっていた。
悲鳴の響く教室を出て、廊下までエレナを引っ張って来ると、アークはエレナの顔を覗き込んで静かに話す。
「…エレナ?…俺を好きだと言ってくれるのは嬉しいが、…そういうのは2人でいる時だけにしてくれないか?…その…照れて困る」
「えっ⁈…ふふっ、ごめんなさい。思ったことがつい口に出てしまうのは悪い癖ですね。
これからは気をつけますわ」
赤くなるアークにエレナは優しく微笑んで言った。
(赤くなってるアーク様も可愛い…)
エレナがアークを大好きだなぁと思いながら見ていると、
「ねぇ、大丈夫?授業始まるよ?」
教室から顔を出したフェリスは、2人に声を掛けた。
「あっ、ああ、すぐ戻る」
恥ずかしさで気まずくなったアークは、慌ててエレナに、席に戻ろう、と言うと、教室へそそくさと入った。
座席に戻ったエレナは、教師が入って来るのを静かに待っていると、隣の席の女生徒が小声で話しかけてきた。
「エレナ様、アーク様と本当に仲が良ろしいんですね?とっても素敵です」
「ふふっ、ありがとう。えっと…その、あなたのお名前、まだ覚えていなくて、ごめんなさい、もう一度教えて頂いても構わないかしら?」
昨日、クラス全員順番に自己紹介したのだが、エレナは名前を覚えるのが苦手で、隣の子くらいはしっかり覚えておくんだったと後悔した。
「ええ、もちろんです!急にクラス全員の名前なんて、私も覚えていませんよ?気になさらないでください。
私はマーガレットです。
少し離れた領地から来たので、この学園の寮に入りました。
これから3年間よろしくお願いします!」
「私は、さっき呼んでくれたから知っていると思うけれど、エレナです。
ねえ、マーガレット?私実は恥ずかしながらお友達って初めてなんだけど、私とお友達になってくれる?」
不安そうにエレナは聞いた。
「エレナ様のお友達が私なんかでいいんですか⁈そんなの嬉しすぎますっ!」
マーガレットは目をキラキラ輝かせた。
「なんかだなんて、そんな。
私の方こそお友達になってくれたら嬉しい。
お友達ができるかとっても不安だったから、話しかけてくれてありがとう。
様も敬語もいらないから、これからどうぞ宜しくね、マーガレット」
それを聞いたマーガレットは、胸の前で祈るように手を組むと、
「よろしくね、エレナ!」
と、さらに目を輝かせて言った。
「ええ、よろしくね、マーガレット」
可愛いく微笑んだエレナを見て、マーガレットの脳内ではお祭り騒ぎが始まっていた。