表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/92

1話 始まりの処刑

ピチョーン…


ピチョーン…


 暗く静かな空間に、滲み出る水滴の音が響き渡る。


「…エレナ…君を連れて行きたくない…嫌だよ、どうしたら君を助けられるんだ…」




「……ぅゔっ…」


 冷たいレンガの壁から出る重い鎖に手足を繋がれ、貼り付けのようにされた少女が、何か聞こえた気がして、小さく呻きながら目を覚ました。


(体中が…痛い…)


「み、…みず…」


 喉がカラカラだった少女は、掠れた声でそう言ったが、視界に入るものを見る限り、飲めそうなものは何もない。どのみちあったとしても、今の状態では手にすることさえできないが。


 牢の柵の外のひび割れた壁を、細い線のように伝う地下水が滴り落ちる音を聞いていると、余計に喉の渇きが増幅するようだった。


 牢の中には少女一人きり。


(さっきの声は…誰…?)


 周りには、他に囚人も居なければ、見張りさえいなかった。ぼろぼろになるまで鞭打たれた体は、もうあまり考える力も残っていない。それでもぼんやりする頭で、自分が何故こんなことになっているのか、なんとか思い出そうとした。


(私、…なんで…こんな目に…

……そう…だ…私…あの2人のせいで…)



カツーン、カツーン、カツーン


 と、足音が暗い空間に反響し、誰かが近づいて来る。

 ボロボロの布を纏ったその少女の牢の前で足音が止まると、ガチャガチャ大きな音を響かせながら鍵を開け、乱暴に扉が開かれた。


 それは顰めっ面をした看守で、ズカズカと中に入ってくると、壁の鎖を解き、少女を後ろ手に縄で縛り直すと、入口に向かって、どんっ、と背中を押した。


「出ろ!」


 押されてふらふらする少女は、牢を出ると、さらに後ろから押されて、無理に歩かされる。進んで行くと、光が差し、外が近づいているのがわかった。


「みんなに見られながら、死ねっ!」


 看守がそう叫んで外へ少女を突き飛ばした。倒れそうになりながら、何とか踏ん張って前を見る。


 そこにあった処刑台が見えた少女は、全て理解して、どうにもならないこの事実を受け止めると、その首を落とすための処刑台へ静かに上がった。


(許さない…私を嵌めた殿下と聖女…)


 悲鳴にも似た民衆の歓声の中、少女に無慈悲な処刑が執行された。


 それを悔しそうに睨み据えながら、静かに涙する者がいた……

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ