42.馬無し馬車が飛ぶわけ……
「きゃぁぁぁぁぁぁ!!」
王女がリョウさんの運転による無軌道な風景の流れに延々と叫び続ける。
そうか、クラヒトさんたちは俺がこうなるのを見てたんだな。
それでも、俺が乘った時よりもゆっくりである。なぜなら、護衛にバイクに乗ったクラヒトさんが付いてるからである。
「な、なんだあれは! ええい!止まれ、止まれぇぇぇぇ!!」
見回りの兵士が高速で動く馬の無い馬車を見つけ、驚きながらも止めようとするが
「あぶねぇぞ、どけ!!」
と、車の前に立ち塞がろうとする兵士をクラヒトさんがバスターソードで兵士を弾き飛ばす。
「ちょ、ちょっと!! 兵士を無駄に傷つけないで!!」
と王女は言う。ほう、兵士の事も気に留めるなんて、良い奴じゃないか。
「大丈夫だぞ、クラヒトのやつ、剣の平たい所で叩いてるから。むしろこの車にぶつかる方が危ないからな」
テルさんがクラヒトさんの行動を解説してくれる。
――ピカッ
そんな様子で車が王城の横から後ろに向かおうとするところで、急に世界が明るくなった。
何が起きたのかと思い、俺は窓から空を見上げると……王城正面当たりにものすごく明るい光が……あれは?
「あれはヒビキのだな、照明弾、そして……」
――ドォォォン
王城の正面から大きな爆発が……
「あれも、ヒビキさん?」
「ああ、拠点破壊なら任せろって言ってたからな」
……いや、流石にあれは……
「ちょ、ちょっと!! 一応、私の家でもあるんだから、やりすぎないでよ!?」
あ、王女が早速速さに慣れたみたいだ。……ちっ、つまんね。
「責めるなら、非道な事をしてる国王を恨めよ」
王女が俺の言葉に怒ったのか、首だけこちらを向いて睨んでくる。
「それはともかく、どこから侵入するのかしら?」
そうだ、王女の言葉から考えるに、正面から入る以外はほぼ無理な言い方だったが……
よくある、国王が逃げのびるための裏道でもあるのだろうか。
「いや、城の後ろから正々堂々と入る」
確かに、城の背後に回り込んだようだ。そしてそのまま城から一旦離れるように走る。
「ちょ、城から離れてるわよ!? 戻らないと!!」
リョウさんは王女から抗議を受けつつも、そのまま城からある程度距離を取り、そしてそのまま
――ギュギュギュギュギュ!!
その場で高速で回転し、180度車の向きを変える。
「クラヒト、エイジ、いけるか?」
「ああ、大丈夫だ、露払いは任せろ」
「こっちも用意出来てる、行け!」
クラヒトさんがまず先に走り出し、そしてそれを追うようにリョウさんがアクセルを全開にする。
――キュキュキュキュ
タイヤが高速回転し地面で削れる音がしたと思うと、そのまま急激なGが俺達にかかる。
「きゃ、きゃぁぁぁぁ!!」
激しいGに耐えかねて王女がやっと騒いでくれた。
さて城の後ろから突入するのはいいのだが、堀があって塀があり、新入はムリだという事だが……
「リョウさん、どう侵入するんですか?」
流石に潜入出来る方法が分からない。だがリョウさんは事も無げにこう言うのだ。
「壁をぶち壊して、飛べばいい」
……ちょ、ちょっと大丈夫なの?
城が近付いてきているがリョウさんはアクセルを緩める様子を見せない。先を行くクラヒトさんも、アクセルを全開にしたままである。
やがて、城が眼前に大きく迫って来たところでエイジさんが窓から顔を出す、そしてその手には……ロケットランチャー?
――ドゥン
エイジさんがロケットランチャーを城の塀に撃ち込む、それとほぼ同時に先導していたクラヒトさんのバイクが全速力で掘りに飛び込む、そして、空を飛ぶ。
「ね、ねぇ……まさか……無茶よ! 馬車が空飛ぶなんて!!」
「掴まってろ!!」
ーーブゥゥン!!
「と、飛んだぁぁぁぁ!!」
リョウさんの車が堀の上に高速で飛び出した瞬間、エイジさんのロケットランチャーが塀を破壊し、その破壊された部分にクラヒトさんのバイクが着地する、そして……
――ドスン
と、車も破壊された塀の隙間から場内に着地した。




