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19.エナちゃんと話そう

 痛みをこらえながらも俺は、帰り道を一歩一歩進んでいく。


 話によると、即効性のある全回復薬は非常に高価で希少のため、俺に与えられたのは徐々に回復をする薬だということだ。


 帰る時に俺を心配してくれたハルカさんたちにHPを見せた所


「薬の効果はすごい! もうHPが1200まで回復してる!!」


 と言われた。……一体、元のHPはどこまで減ってたのかと聞いたらツムギちゃんから


「知らない方がいい」と一言。


 確かにお酒の瓶で頭を殴るだけでも大ダメージだろう。


 流石は冒険者、急所を的確に付いてくる。


 ちなみに、本当はもう少し早いタイミングでハルカさんたちは助けに入るつもりだったそうだが、結構早い段階で、マナちゃんが殺意マシマシで過剰に相手に被害を与えそうだったので、2人がかりで抑えるのに精いっぱいだったそうだ。


 結局は相手が剣なんて持ち出してきたから、マナちゃんを押さえつけるよりも解放した方が良いとの判断になったそうだが……。


 助けに入るのが遅れてごめんなさいと言われたが、助けてくれたことに感謝なので遅い早いはどうでもよいのだ。


 そもそも、何があっても俺一人で謝罪すると言っていたので、ギリギリまで歯がゆい思いをしながらも耐えてくれたのだろう。俺は良い仲間と巡り会えたのだなと実感する。


 俺をこの世界に来て初めて受け入れてくれたニーアさん。


 俺を仲間として受け入れてくれたハルカさん、ツムギちゃん、マナちゃん。


 そして、俺に居場所を与えてくれた、アンナさん、そして……エナちゃん。


 皆が受け入れてくれたからこそ、俺は今、こうやって生きていられるのだ。



「ただいま」


 いつもより遅い帰宅時間になってしまったが、入口から堂々と戻ってくると、受付のカウンターにはアンナさんが居た。


 アンナさんの表情は内心を抑え込もうと平常心を保っているように見せかけて、その表情の端々から苛立ちや呆れ、困惑といった感情がにじみ出ているような表情であった。


「おかえりなさい、女の子泣かせさん」


 うん、予想は付いていたけれど、エナちゃん爆弾の影響でアンナさんにもまた爆弾が付いたのだろうね。


「遅いお帰りで、一体どこの女性と過ごしていた……!?」


 目線を俺に合わせたアンナさんが目を見開き、驚いた表情をする。


 何だろ? 俺の顔に何かついているのだろうか?


「サクヤさん!! そのケガは……!?」


 ああ、ケガに驚いたのか。


「自業自得の怪我です。それよりも、エナちゃんは?」


 とりあえず、俺が平然としている事を確認し、ホッと胸を撫で下ろすアンナさん。


 俺のゲームシステムの影響を受けているなら、怒っていてしかるべきなのに俺の心配をしてくれるなんて、本当に優しい人なんだな。


「ダメです。今のエナとサクヤさんを会わせるわけにはいきません……諦めてください」


 だが、アンナさんはエナちゃんと俺が会う事を拒絶する。それでも俺は諦めない。


 何故午前中にこの根性を見せなかったか、今になって後悔してしまう。大事な人が傷付いてるかもしれないと言うのに何もしなかった俺の責任だ。


「それでも……俺は、エナちゃんと会わないといけないんです」


 そのまま俺とアンナさんの間に緊張が走る。お互いに何も言わずに見つめ合う、その時間は数秒かそこらだったとは思うが、俺にとってはとても長い時間に感じた。


「……本当に、エナから嫌われるかもしれませんよ? もしかしたら出て行って欲しいと言われるかもしれませんよ? それでもいいのですか?」


「構いません」


 沈黙を破ったアンナさんのその問いかけに、俺は即答した。


 まさか即答されるとは思わなかったのか、アンナさんは目をぱちくりとする。


「何故そこまでして、エナと話したいのですか?」


 何故かって? そんなの決まってる。


「俺が、エナちゃんと話す事が大好きだからですよ」



 母娘の生活空間、そこに俺は特別に入れてもらい、今俺は、エナちゃんの部屋の前に居る。


 実は朝からエナちゃんが部屋から出て来ずに、アンナさんも困っていたとの事。


「エナはものすごくサクヤさんを慕っていたと思います。ですから……いつもエナを笑顔にしてくれていたサクヤさんとお話しできれば、いつものあの子に戻るのではないかと思うのです」


 朝の挨拶、帰宅の時の挨拶だけではなく、色々なお話をエナちゃんとしてきた。そして、その時のエナちゃんは、いつも笑顔だった。


 いつも笑顔を見せてくれていたエナちゃんが、この扉の向こうで泣いているかもしれない。しかもそれは俺のせいかもしれない。そう思うと、胸が締め付けられる。


「それなら何故、さっき俺を試すような事をしたのですか!?」


 思わず強い口調でアンナさんに質問してから、しまったと思う。


 アンナさんは全然悪くない、悪いのは……俺だ。


「女性を傷付けたサクヤさんに対して、私も実際に怒ってたのもあります。ですが……サクヤさんの覚悟が無いまま、娘に会わせるつもりが無かったというのが本音です」


 試すような事になってごめんなさいと、アンナさんは俺の強めの問いかけに不快な様子を少しも見せず、そのまま俺の手を取り


「エナの事、よろしくお願いいたします」


 とただ一言、お願いをしてくるのであった。

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