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18.おねかわ

「あ、起きたわね」


 俺が気が付き目を開けると、顔を覗き込んでいたニーアさんと目が合う。


 どうやら、膝枕をされていたようだ。頭に感じる柔らかな感触と、見上げる形になったが故の体の豊満な部位とニーアさんのキレイと美しいと可愛いを全て成立させた顔を同時に楽しめて役得役得……


……あれ?許してもらえるまでって言いながら謝罪をしてなかったっけ?


……あっ!!


 そうだ、誕生日プレゼントだ!! 俺はバッと立ち上がり……体に激痛が走る。


「どうしたの? おちついて」


 ニーアさんが俺にそう声を掛けてくれるが、俺はそれどころではない、辺りを見回すと、見慣れた包装が目に入る。


 だがその包装は所々赤黒くなっており、しわくちゃになっている。


 俺は焦って中身を確認し……よかった、中身は無事だ!!


 だが、このタイミングになって思う。ちょっとプレゼントとしてはどうなんだろう?


 喜んでもらえるか、もしかしたら、気に入らないからと怒られるのではないか、と。


「ねえ、サクヤくん、どうしたの?」


 俺の顔面の七変化を見て、ニーアさんが心配そうに俺を見る。


――駄目だ、もうこの人に、悲しい顔や心配をかける訳にはいかない!!


 俺は意を決して、プレゼントを差し出す。


「1日遅くなってごめんなさい。誕生日プレゼントです」


 俺が購入出来るくらいの金額の中で、ニーアさんに送りたいと思ったそのプレゼントは、ぬいぐるみだった。


「……えっ? あ、ありがとう」


 ほら、なんか反応が鈍いし。これ絶対間違ってるよ!!


 また怒られるのが怖くて、俺は目を閉じたままだ。


「ところで、何でぬいぐるみなの?」


 正直、怖い。目をあけるのも、理由を言うのも。それでも俺は言わなきゃいけない。


「俺にとって、ニーアさんは可愛い女の子なので、何か可愛い物を送りたいと思ったんです!! 俺はあまり女性への贈り物については詳しくないから、こんなチョイスになってしまいましたが……」


 と言いながらゆっくりと目を開けると、そこにあるニーアさんは微笑んでいた。


「綺麗とか言ってくれる人はいたけど、私の事を可愛いなんて言ってくれるの、サクヤくんくらいよ」


 それはニーアさんの可愛さに気が付かない人たちが節穴なだけです。


「そっか、可愛い、か……ねえ、サクヤくん……」


「は、はい!!」


 ニーアさんは渡したぬいぐるみを胸元で抱きかかえ、もじもじとしながら顔の華から下をぬいぐるみに埋めるような姿勢で俺の事を上目遣いで見ながら


「……ありがと」


 と一言呟き、そのまま顔を全部ぬいぐるみに埋める。その時の頬は心なしか、赤く染まっていたように思える。


 いやほんと、野球漬けの人生で女性に耐性が無いんだから、そういうのやめてくださいよー。


 この流れで「今夜は離れたくない」なんて言われたら絶対に俺は落ちる。


「ねえサクヤくん。体がケガだらけで、今夜、宿まで戻るの大変じゃない? 私の家、ここから近いんだ。だから……うちに来る?」


 とか思ってたら、早速それっぽい事を言われ、俺はゴクリと喉を鳴らす。


 俺の頭の中では「欲望のままうごいちまえよ」という悪魔の囁きと「好意からの提案です、甘えなければ失礼です」という天使の囁きが響き、そのまま天使と悪魔が喧嘩……してない。


 天使と悪魔が腕組んで踊ってる。


 あぁ、まさかあのゲームの恵奈ちゃんを攻略するよりも先に恋人が出来るのか、俺!!


……エナちゃん?


「ごめんなさい、でも俺、今日は帰らないと」


 頭の中の天使と悪魔を思いきりフルスイングでかっ飛ばし、スタンドインさせたのは、頭の中の俺だった。


「そう……」


 心なしかシュンとするニーアさん。違う、違うんだ……


「宿にまだ一人、俺が謝罪しなきゃいけない人が居るんです。俺は、女の子を傷付けたまま放置するようなやつとニーアさんが一緒に居るのが許せないんです。だから、これは俺の我が儘です……俺の事、嫌いになりました?」


 多分、こう聞くと首を横に振ってくれると思って俺は聞いたのだ。多分、これは卑怯なのだろう。実際、ニーアさんは首を横に振ってくれた。


「私が首を横に振るの分かってて言ったでしょ? ……ちゃんと仲直りしてきなさい、ボ・ウ・ヤ」


 ニーアさんには見透かされていたようだ。それでも微笑んで送り出してくれるニーアさん。


 ボ・ウ・ヤなんて大人な女性が子供を挑発するような発言をしてももう遅い、だって、その発言すら可愛いと思ってしまっている俺にはもう効かないのだから。

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