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17.ギルドマスター

 ギルドマスターと呼ばれた男は、ギロリとあたりを見回す。


 それだけで狂暴な魔獣ですら怯えてしまうような視線に、普段は酒場を兼任しており騒がしいギルド内がシンと静まり返る、


「で、これは何の騒ぎだ?」


 ギルドマスターは主に、サクヤを叩いていた人間を睨みつける。


「そ、その、そこの異世界人がニーアさんにひどい事を……」


「ほう……」


 ギルドマスターは横に控えるニーアの前髪をかき分け、頭をじっと凝視する。


 急に思いもしない動きをギルドマスターが取ったため、周囲の全員の頭に疑問符が浮かぶが、その後の発言でその行動が意味するところを察した。


「見た所ニーアに傷一つも無いが、本当にそこの男がニーアを囲んで叩き、剣で斬り殺そうとでもしたのか?」


 皆はニーアを見つめ、その後に気を失って倒れているサクヤの顔を確認する。


――ひどい怪我だ、頭からは血が流れ、床に血だまりを作っている。


「さ、サクヤくん!?」


 ニーアがあまりの惨状に言葉を失う。確かに争いごとになったからギルドマスターを呼びに行きはしたが、まさかここまで酷い事になっているとは思ってなかったのだ。


「……奥の応接間で介抱してやれ」


「は、はい!!」


 ニーアがサクヤを連れて行こうとするが、やはり上手く持ち上がらない。


「ツムギちゃん、手伝うわよ」


「もちろん!!」


 ハルカとツムギが手伝い、サクヤを搬送する、そしてその後をついていこうとするマナエ。


「お、おい!! そこの小娘!! 待ちやがれ!!」


 去っていこうとするマナエに、腕を切り落とされた男が食って掛かる。


「確かにギルドマスターの言う通り、やりすぎたかもしれないがな!! 腕を斬り落とされる筋合いはねえよ!! どう落とし前付けてくれるんだ!? ああ?」


「その、斬り落とされた腕が握ってるのは何だ?」


 ギルドマスターに淡々と返され、腕を斬り落とされた男は狼狽えながらも


「け、剣です……はい……」


 と返答し、ギルドマスターは呆れたような表情で頭をガシガシと掻く。


「酒場での喧嘩程度で剣を抜くバカがどこにいるか。そもそも、剣を抜いた時は自分が斬られても文句言えないだろうが……いいからお前も怪我の手当てしろ。気絶してるだけのバカどもと一緒に後でこってり絞ってやる」


 そこからギルドマスターはマナエに向き直り


「済まなかったな、お嬢ちゃん。お仲間にも伝えておいてくれ。後でギルドとして正式に謝罪すると」


 マナエはこくっと首を縦に振ると、皆の後を追って応接間のある場所に歩いて行った。


「……どうせ、ギルドマスターは異世界人の方が大事なんだろ!! 俺達みたいな地元民なんて、居ても無駄だと思ってるんだろ!!」


 はぁ、とギルドマスターはため息を吐きつつ


「それなら、異世界人が受けてるクエスト受けるか? どれがいい? ギガントオーク討伐か? ヘルアント討伐か? 討伐が嫌なら採取でもいいぞ? 断崖絶壁でしか取れない薬草採取でもしてくるか? もちろん報酬は異世界人に払ってる額と同額を払うぞ?」


 あっさりと許可が出たものの、そこで提示された内容があまりにも危険度が高く、皆がギルドマスターから目線を逸らす。


「分かるか? 俺達現地の人間が家族や仲間の為にやるなら分かる。でもな、異世界人は家族もなにもここには無いのにやってくれてるんだ。さっきの坊主の怪我見ただろ? 異世界人だからって無敵じゃねぇ、それでも、危険な仕事をやってるんだ」


 広間に居る冒険者たちは下を向いたまま顔を上げようとはしない。もっと稼ぎたい。もっといい仕事は無いか、などと酒の肴に愚痴ってたら、稼ぎのいい異世界人が無防備に土下座などしていたので、ついうっぷん晴らしをしてしまっただけなのだ。


「俺は現地の人間だろうと異世界人だろうとひいきはしていないつもりだ。異世界人にも最低限のサポートしかしていない。後はどのクエストを受けるか、お前らが決めろ。もし金額に不服だというなら、高難易度のクエストを受けろ!! 俺は大歓迎だ!!」

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