1.俺が追放される
「そやつをつまみ出せ!!」
俺、虹原朔也は異世界召喚をされた直後、その召喚を行った張本人である国王より追放をされようとしていた。
その国王に対し、俺と一緒に召喚されこちらは晴れて勇者と認定された親友、矢森慎吾が「国王、彼は俺の親友です!! どうか、おやめください!!」と止めようとしてくれているが、国王は聞く耳を持たないようだ。
「おお、勇者様。このような無能に取りつかれ、さぞや肩身が狭い思いをしたでしょう。ご安心ください、貴方様には私が責任をもって、有能な仲間を手配させていただきますぞ!!」
完全に人の話を聞く気はないようだ。国王はそのまま俺を見下すように睨みつけると
「我が勇者一人召喚するのにも多大なる力が必要だというのに、そのうちの1枠を無能が埋めるとは……万死に値するぞ!!」
などとぬかしやがるのだ。……流石にキレていいよな?
「勝手に呼びつけておいてその言い草は何だ?」
「ふん、勇者でない者に礼など不要、さっさと出ていけ。貴様のような無能が居ると、この王城の品位が下がるのでな。……何をしている、衛兵、そいつをつまみ出せ!!」
「はっ!! さあ、来るんだ!!」
今にも暴れようとする俺を衛兵が数人がかりで抑え込み、そのまま王城の外に連れて行こうとする。
「朔也!!」
「慎吾、お前はムリをするな!! 俺は大丈夫だから、お前は自分の事だけ心配してろ!!」
こうして俺は、王城より追放される事となった。
◇
「……済まないな、最近、国王はどこか思い詰めている所があってな……許せとは言わないが……」
王城から出る際、衛兵よりそう告げられながらボロ布とそれに入れられたナイフ、そして、ちょっとした金貨が数枚入ったものを渡された。
「これは?」
「せめてもの餞のお金と武器だ。宿に数日泊まる事の出来る程度はある」
問答無用で追放したにしては、好待遇だ。
「このお金はどこから?」
衛兵は周囲を伺うようにキョロキョロしてから、小声で俺に内情を教えてくれた。
「ここだけの話にしてくださいね。最近、魔王に追い詰められているのか、勇者を召喚しては追い出すと言う事を繰り返してまして……その中には自ら命を絶った者も居ると聞き、財務相が不憫に思って、旅立つ勇者様達にせめてもと、工面してくださってるのです」
あのクソ国王、そんなに何回も同じ事やってるのか。そして、国内でも国王に対して疑念を抱いている人がいると。
さらにそれが、国の財布を握っているトップだというのがまた面白いところだ。財布を敵に握られているという、とても愉快な構図の出来上がりだ。
ざまあみろ国王、この国の未来は明るいな!!
「いいんですか? 国王が許さなさそうですが」
「ええ、財務相の独断でやってます。我々も国王の手前、あなたを押さえつけはしましたが、本音は仲良くやっていきたいのです。あのような事があった直後でこのような事を言っても説得力ないですが……この街の人間は、異世界からの来訪者を歓迎しております……貴殿のご武運を」
さて、門前で衛兵の人と話し込んでる訳にもいかない。とりあえず、宿の確保をしなくては……しかし、何でこうなった?