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バキュラ  作者: 松宮 奏
プロローグ
2/18

剣士

「ここにいてはいけない。早く逃げるのよ」

「いやだ。そんなのできっこないよ。みんなを置いて逃げるなんて」

「いいから。お願いだからいうことを聞いて」


 大粒の涙を流し、ヒステリックに訴え続ける母マリアに、ルキアは根負けした。


「絶対に死なないでね」


 ルキアは優しく微笑んだマリアの顔を目に焼き付け、振り返り、走り出す。マリアがもう助からないことはマリアもルキアも知っていた。 


 視界が歪み、前がしっかりと見えていない。何度も転びそうになるが、体制を立て直して走り出す。

 やがて「永久結路」と呼ばれる地下通路の前に辿り着く。村と村を繋ぐ秘密の地下通路だ。今日のような日のために作られ、秘密の通路の存在はルキア達のいる村の住人と秘密の通路の出口にある村人達しか知らない。 


 ルキアは一見、地面としか見えない隠し扉の引き手を探り当て、扉を開いた。暗い道が永遠のように続いている。 


 ーーその時だった。


 轟音と共に火煙が村に立ち登ったかと思うと、村人の叫ぶ声が轟音に負けないくらいに響いた。

 ルキアは下唇を噛み、必死で悔しさを堪える。声が聞こえた方角を見ないようにして、地下通路へ入り、扉を閉じた。

 地下道へと続く階段の途中でルキアは膝から崩れ落ちる。


 こんな理不尽が許されていいのか。


 自分にもっと力があれば。こんな国でなければ。この国の王が、あのバキュラとい悪魔でなければ。家族と共に平穏な日々をずっと過ごせていたのに。 


 憎い。憎い。憎い。


 自分の無力さも。理不尽な王も。この世界も。全てが憎い。


 ルキアは大声を出して泣き喚く。だが、広い地下通路でその声を聞いている者はいない。何度も地面を手で殴りつける。腫れ上がり血で赤く染まった自分の拳を見て、ルキアは誓った。


 バキュラよ。いつの日か必ず、復讐を果たす。


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