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バキュラ  作者: 松宮 奏
一章
13/18

剣士

「気が変わった。全て焼き尽くすぞ」

「え。人肉は?」


 村の手前へと一行はたどり着いた。ルキアの発言にトンズラが不満そうに睨みつける。


「こんな寂れた村だ。村人もどうせ骨と皮の痩せ細った奴ばかりだ。食ったところで美味しくない。それよりも、焼き尽くすんだ。村の全てをだ。人も家畜も民家も畑も。燃えて出た灰までも燃やすんだ。ここを更地にしてしまおう」

「いいねえええ、それ。おい、火矢と大砲の準備だ。たらふく火薬を詰め込んでな」


 トンズラは物を与えられた子供のように無邪気に他の兵士達に指示を出した。準備が整った。


「放て」


 ルキアの合図で大砲と火矢が一斉に放たれた。

 火矢が空気を切り裂く音。大砲が民家を破壊する音。民家の木が焼けるパチパチとした音。逃げ惑う村人の足音。嘆き、悲しみ、泣き叫ぶ音。ルキアの脳裏にあの日の記憶が蘇り、今すぐ逃げ出したい衝動に駆られたが、涼しい顔を作り、耐えた。


「ハハハハハハハ」


 後方でトンズラは笑っていた。


「素晴らしい。死にゆく人間の悲鳴はどんな音楽よりも名曲だ。燃えたぎる村はどんな絵画よりも迫力がある! 最高だ。燃えろ。もっと燃えろ」


 トンズラに合わせ、兵士たちも笑い、口々に叫ぶ。皆、この光景を楽しんでいる。狂っている。バキュラだけではなく、この国そのものが。


 何よりも恐るのは、いつかこの狂気にに怒りが飲み込まれてしまうことだ。

 ルキアは燃えたぎる村を目を逸らさずに見つめ続けた。

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