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バキュラ  作者: 松宮 奏
一章
12/18

剣士

 ルキアの住む国ーーデスパイア王国の兵士には階級があり、幾つもの部隊に分かれている。

 王の側近となり順守する、王側近兵。数百の部隊を指揮する軍隊長。さらにそのそれぞれの部隊を指揮する部隊長。ルキアが目指しているのは無論、王の側で順守出来る王側近兵の立場だ。

 どの兵士も最初は各部隊の一員として配属される。ルキアもそうだった。しかしルキアは一年という、一兵士としては異例の速さで今の部隊長という階級まで登り詰めていた。


 同じ茜色でも朝焼けと夕焼けでは趣が違う。


 沈みゆく太陽を騎乗より眺めながらルキアは考えていた。夕焼けの空の色は燃やされた村の炎の色に似ている。

 ルキアは自身の部下である、百名ほどの隊員を引き連れ、昨晩来た道を進んでいた。闊歩するようにゆっくりとした行進だから、昨夜とは倍ほど時間がかかるだろう。

 計画が万が一にも失敗しないだろうか。

 ルキアは内心、心配していた。下手を打てばミルキを自分の手で殺すことになる。いや、そうならない為の計画なのだが。


「どうしたんすか、隊長。これから『祭』だってのに、元気ないっすねえ」


 ルキアの隣で歩みを進めていた、トンズラがルキアの顔を覗き込み話しかけた。トンズラはルキアが率いる隊の副隊長だ。王国の決まりとしては副隊長という決まりはないが、ルキアが取り決め、任命していたのだった。

 トンズラの顔や全身に刺青が入った厳つい容姿は、兵隊というより盗賊や山賊といった悪者を連想させる。

 というのも、ルキアの率いる隊は王国の兵士の中でも、半グレのような集団だ。命令無視は日常茶飯事で、盗みや仲間殺し、隊長殺しを行った者も中にはいる。実力はあるが、危険な思想を持ち、他の隊から追われた者達の集まりなのだ。

 しかしルキアはその圧倒的剣術により半グレ集団を見事に纏め上げている。

 この集団を纏め上げられるのは部隊長という階級の中ではルキア以外いなかった。

 そして剣術の他にも一つ。ルキアには半グレ集団に一目置かれている理由がある。


「肉のことを考えていたんだ」


 隣を進むトンズラにルキアが言う。


「肉……ですか?」

「そうだ。人肉を食べたことがあるか? 父、母、娘の三人家族がいるとするだろう。まずは家族の前で父親を燃やす。次に母の手足を解体する。その手足を父親の火で焼き、娘の前で食うのだ。苦悶で歪む若い娘の表情をアテにして喰らう人肉。最高だとは思わないか」


「ははは。あんた、やっぱいいな。俺、この隊でよかったって思うよ。最高だぜ。おい、皆。今夜は人肉パーティーだぞ」


 隊員達はうおおと歓声を上げ、ルキアを囃子立てる。そう。ルキアが半グレの兵士達に一目置かれている理由。そう、それは半グレ達をも超えるほどの極悪非道さだった。

 とはいえ、バキュラを憎むルキアには、人を殺さないという信念がある。実際、コロシアムで優勝し王都に来て戦場に赴くようになってからも一人も人を殺していない。

 郷に入れば剛に従え。

 ルキアは自身が半グレ集団の部隊長に命じられた時から、集団を纏めるため、時には死体を細工し、時には話をでっちあげ、誰よりも極悪非道な隊長を演じ続けてきたのだ。


 極悪非道な隊長を演じている自分の発言や死体に細工する時など。自分自身の言動に吐き気を催し、精神が狂いそうになることは多々あった。

 しかし、全てはバキュラへの復讐のため。そう思えばルキアには耐えることが出来たのだった。


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