大男の山べえといっしょにおとまり(その1)
小助は、森の中のさらにおくへ向かおうとつりばしをわたっています。この先には、山べえがくらすほらあながあります。
「わ~い! おとまり! おとまり!」
はじめてのおとまりとあって、小助は今から楽しみでたまりません。草むらがしげっている中でぬかるみを見つけると、小助はみるみるうちにどろんこまみれになりました。
「どろんこ、たのちい(楽しい)! どろんこ、たのちい!」
小助のはしゃぐ声に、近くにあるほらあなから山べえが出てきました。大男は、あいかわらず元気いっぱいの小助のすがたを見ようとぬかるみのそばでしゃがみました。
「はっはっは! おれのすみかにおとまりにやってきたのか」
「うん! おとまり! おとまり!」
「そうかそうか。まずは、いっしょに体をあらおうかな」
山へえといっしょにほらあなの近くにあるたきで、小助は大はしゃぎしながら体をあらっています。
「わっ! そんなにパシャパシャしなくても」
「キャッキャッ、キャッキャッキャッ」
小助はどろんこだらけの体がきれいになっても、たきがながれおちるところにはなれずにいます。山べえは、小助からつぎつぎと水をかけられてしまうのでたまったものではありません。
「パシャパシャパシャ! パシャパシャパシャ!」
「小助、よくもやってくれたな! おれからのおかえしだ!」
「キャッキャッ、キャッキャッ」
小助と山べえは、水のかけあいっこにすっかりむちゅうになっています。水あそびをおえると、小助は山べえの足にへばりついておねだりをしています。
「ねえねえ、いっちょにあちょぼう(いっしょにあそぼう)! いっちょにあちょぼう!」
山べえは、いつも元気いっぱいの小助と何をしようか頭で考えています。そんな時、あることを思いつきました。
「いっしょにかた車しようか」
「うん! かた車! かた車!」
小助は、しゃがみこんだ山べえのかたの上にすわりました。山べえがそのまま立ち上がると、小助はかわいい声で大よろこびしています。
「キャッキャッ、キャッキャッキャッ」
「はっはっは、そんなにうれしいのか。ここから見たら、ほらあなのまわりがこんなに広いのが分かるぞ」
山べえのかた車にのっている小助は、森の中から聞こえる小鳥の鳴き声にきょうみをしめしています。
「あっち! あっち!」
「どうしたんだ?」
「あっちにいるの、なあに?」
小助が何か見たがっているみたいなので、山べえは森の手前までかた車でかつぎながらつれて行きました。すると、小助は木に止まっている小鳥のすがたをじっと見ています。
山べえがほほえましい顔つきで立ち止まっている間、小助は小鳥がにげないように声を出すことはありません。小鳥たちは、小助たちのまわりでやさしい歌うようにさえずっています。