てんぐのお母さんとお父さん
てんぐのふせたろうは、ふたたびきものとはかまをみにつけるとそばにいる小助へ声をかけました。
「これから、おいらの家へつれて行ってあげるからついておいで」
「わ~い! てんぐの家! てんぐの家」
小助は、新しい友だちのふせたろうの後をついて行くように歩きはじめました。オオカミたちも、小助とふせたろうのようすをじっとながめています。
「ぼうやは、てんぐの子どもとすっかりなかよくなったみたいだね」
こうして、小助たちはてんぐの家へ向かおうと草むらの中をつぎつぎとすすんでいます。空を見上げると、黒いカラスのすがたがやけに目立つようになりました。
「こ、こわいよう……」
ちびっこオオカミは、カラスの鳴き声がひびきわたるたびにお母さんの後ろへかくれてしまいます。お母さんオオカミがこわくないよと言っても、子どもたちは後ろにかくれたままです。
しばらくして草むらから出ると、かやぶきのやねにおおわれた3かいだての家が目の前にあらわれました。小助は、ふせたろうについていくようにその家の中へ入ることにしました。
「母さん、ただいま帰ってまいりました」
「ふせたろう、お帰りなさい」
小助は、ふせたろうがあいてにきちんとあいさつしているようすをふしぎそうにながめています。すると、ふせたろうのお母さんが小助に話しかけてきました。
「ぼうや、どうしたここへきたの?」
「友だち! 友だち!」
ふせたろうにしがみつく小助のすがたに、お母さんはえがおでほほえんでいます。
「ぼうやの名前は?」
「こちゅけ(小助)! こちゅけ! こちゅけ!」
「ふふふ、かわいい名前だね」
お母さんは、はらがけ1まいの人間の小さい子どものすがたをやさしく見つめています。となりでは、ふせたろうが小助と会った時のことをお母さんに話しています。
「切りかぶにすわっていたら、こちゅけがそばへやってきておすもうをしようって言いだして」
「ふせたろうは、おすもうでいつも強いあいてをたおしているのを見ているけど」
「母さん、じつは……」
「どうしたの?」
「おいらは、こちゅけにもち上げられて土ひょうの外へなげられてしまったの」
ふせたろうは、おすもうで小助にまけてしまったのをまだわすれていません。そんな時、ふせたろうよりも一回りも二回りもでっかい男がお母さんのとなりにあらわれました。
「ふせたろうよりもすもうが強いやつはだれだ?」
「父さん、おすもうでおいらに土をつけたのは……」
お父さんは、ふせたろうにかった小助のすがたをふしぎそうにながめています。なぜなら、赤ちゃんのように小さい子どもがおすもうにかつとは考えられないからです。
「それなら、わしとすもうをとってどっちが強いのかきめようかな」
「わ~い! おちゅもう(おすもう)! おちゅもう!」
小助は、てんぐのお父さんとおすもうで力くらべをすることになったのでピョンピョンとうれしそうにとびはねています。




