雪女の家と小助くん
小助は、雪おにがきえた後も雪女のそばからはなれようとはしません。雪女のほうも、小助のようすが気になってしかたがありません。
「ぼうや、もうそろそろ帰らないと」
「ずっといっちょ(いっしょ)! ずっといっちょ!」
「ふふふ、しょうがないわね。それじゃあ、あたしがくらすところへつれて行こうかな」
「わ~い! わ~い!」
大よろこびの小助のすがたに、雪女もやさしそうな顔つきで見つめています。こうして、小助は雪女といっしょに雪のふかいところをすすむことになりました。
「小助くん、どこまで行くのかしら」
お母さん犬は、小助のようすを見ようとワン太とともに後ろからついて行きます。うすぐらい空からは、白い雪がずっとふりつづいています。
そんな中であっても、小助ははらがけ1まいで雪道を元気いっぱいにふみしめています。小助は、雪の中へすっぽりと足がはまっても気にすることはありません。
「ぼうやの足あとはかわいいね」
「あちあと(足あと)! あちあと!」
足がはまったところには、小助の足あとがくっきりとのこっています。小助は、自分の足あとをじっと見ながら大はしゃぎしています。
やがて、小助たちの目の先に1つの小さな家があらわれました。その家のやねは、たくさんの雪におおわれています。
「わあ~っ! 雪の家だ! 雪の家だ!」
雪女がくらすこの家には、いろりのようなあたたかいところはありません。家の中へ入っても、外からつめたい風がつぎつぎと入ってきます。でも、小助はどんなにさむくてもまったくへいきです。
「こ、こわいよう……」
「ワン太くん、そんなにこわがらなくても……」
ワン太は、家の中がくらいのがこわいのでお母さん犬のそばから動こうとはしません。そんな時、雪女のまわりがほのかに明るくなりました。
よく見ると、雪女のそばには青いひとだまがうかんでいます。ひとだまがへやの中をとび回るのを見て、ワン太はすぐにお母さん犬の後ろにかくれてこわがっています。
そんな中、小助は雪女の目の前でいつもの元気な声でさっきと同じようにおねだりをしています。
「おっぱい! おっぱい! おっぱい!」
「ふふふ、しょうがないわね。こっちへおいで」
雪女はほのかな明かりにかこまれながら、小助を自分のりょう手でやさしくだき上げています。すると、小助はかわいい顔つきで雪女のおっぱいをのみはじめました。
「ぼうやも、いっぱいのんで大きくなるといいね」
人間が雪女に会えるのは、雪がふりつもった冬の間だけです。それでも、小助はお母さんのようなやさしさを見せる雪女のことをすっかり気に入っています。




