赤ちゃんのお父さんとお母さん
すなはまでは、小助と赤ちゃんがじゃれ合うようにあそんでいます。そばでは、サルが2人のようすをじっと見まもっています。
「キャッキャッ、キャッキャッキャッ」
小助たちがおすもうあそびを楽しんでいると、家のあつまるところからトビがもどってきました。トビは、自らのつばさをはばたかせながら大きな声でさけんでいます。
「こっちのほうに赤ちゃんをさがしている人がくるわ」
「じゃあ、わざわざ向こうまで行かなくてもすむようだな」
この赤ちゃんは、まだ自分からうまく2本足で歩くことができません。2本足で立つことはできますが、歩き出すとすぐにゴロンところんでしまいます。
すぐになき出す赤ちゃんですが、小助のかわいいえがおを見るとすぐになきやんでキャッキャッとわらってくれます。
「いつもいっちょ(いっしょ)! いつもいっしょ!」
小助は、まるで自分の弟みたいな赤ちゃんのかわいいすがたをりょう手でだきしめています。赤ちゃんのほうも、小助の顔を見るたびにうれしそうなえがおを見せてくれます。
そんな時、すなはまの上をいそぎ足で走っている男の人と女の人が向こうからやってきました。2人がきているのは、そでのないみじかいきものです。
女の人は、小助といっしょにいた赤ちゃんを見つけるとすぐにだき上げながらなみだをながしています。
「ぼうや、ごめんね。ここにおきざりにしてしまって……」
お母さんが赤ちゃんをだいていると、お父さんもそのようすをそばでじっと見つめています。その間も、赤ちゃんはどうしてお母さんがないているのか分からないようです。
赤ちゃんをだくのは、お母さんだけではありません。こんどは、お父さんが赤ちゃんをやさしくだき上げています。
お父さんは、赤ちゃんをだきながら目の前にいる小助のすがたをながめています。そのかわいい顔つきは、赤ちゃんとほぼそっくりです。
「ぼうや、どこからきたの?」
「あっち! あっち!」
「海の向こうから?」
「うん!」
小助は、自分がどこからきたのか赤ちゃんのお父さんの前で大きな声を上げています。そのようすを見て、赤ちゃんのお父さんもやさしい声で小助をこっちへよぶことにしました。
「ぼうやの名前は?」
「小助! 小助! 小助!」
「小助くんか、かわいい名前だね」
いつも元気な小助の声は、赤ちゃんをだいているお父さんにもつたわっています。そうするうちに、赤ちゃんがふたたび大声でなき出しました。
「うえええ~ん! うえええええええええ~ん!」
「もしかして、おっぱいがのみたいのかな?」
お父さんは、お母さんに赤ちゃんを手わたすことにしました。お母さんは、ないている赤ちゃんをだっこしながらおっぱいをあたえようとしています。
赤ちゃんはおっぱいをのんでいると、しだいにいつものえがおへもどるようになりました。お母さんも、赤ちゃんがキャッキャッとうれしそうにしているようすをやさしく見つめています。
これを見た小助は、いつものおねだりをしようとお母さんのそばへやってきました。
「かあちゃ! かあちゃ!」
「小助くん、どうしたの?」
「おっぱい! おっぱい! おっぱい!」
「ふふふ、しょうがないわね。ぼうやがおっぱいをのみおえるまでまっていてね」
お母さんは、おっぱいをのんだばかりの赤ちゃんをお父さんに手わたすと、そばにいる小助をすぐにだき上げました。
「小助くんもいっぱいのんで大きくなろうね」
小助がおっぱいをのんでいるようすに、お母さんもにっこりとえがおを見せています。その後も、小助は足をバタバタさせながらもおっぱいをたくさんのみつづけています。
こうして、おっぱいをのみおわった小助は赤ちゃんと入れかわるように、お父さんにだっこされることになりました。お母さんが赤ちゃんをだっこしているそばで、お父さんは小助をはじめてだっこしています。
お父さんは、小助をよろこばそうと自分の顔の前まで高く上げています。小助は、はじめて見るお父さんにかわいいえがおでわらっています。
「キャッキャッキャッ、キャッキャッキャッ」
「小助くん、だっこされるのがうれしいんだね」
だっこしている小助を楽しませようと、お父さんがもういちど高く上げたその時のことです。
「ジョパジョパジョパ、ジョジョジョジョジョジョジョジョ~ッ」
「わっ!」
小助は、お父さんの顔に向かって元気いっぱいのおしっこをめいちゅうさせています。いきなりのおしっここうげきに、お父さんはなすすべもありません。
「小助があいての顔におしっこするのはあいかわらずだなあ」
サルは少しはなれたところから見ながら、小助のいつも通りの元気さにかんしんしています。




