小助くんとでっかいナマズ
ここは、しまのまん中にある山のてっぺんに広がる大きな池です。
小助は、いきおいよくとびこんだ大きな池の中をもぐりつづけています。そこで目にしたのは、小助が山おくの川や池で見かけるお魚たちのすがたです。
「わあ~っ! おちゃかな(お魚)! おちゃかな!」
大きな池で見るお魚と、さっきまで小助が海で見たお魚はしゅるいがちがいます。それでも、小助はお魚たちがおよぐようすにえがおで見つめています。
さらにふかいところへ向かって小助がもぐろうとしていると、自分よりもはるかにでっかくて長い魚らしきものがいることに気づきました。よく見ると、そのお魚のあごの上と下にひげが2本ずつあります。
「おちゃかなのひげだ! おちゃかなのひげだ!」
小助は、ふかいところからやってきた大きな魚のすがたを見て大はしゃぎしています。すると、その魚は水中に小さな人間の子どもをふしぎそうに見つめています。
「おやおや、ここで何をしているのかな?」
「おちゃかな! おちゃかな!」
「はっはっは! ぼうやはお魚になりたいんだね」
「うん!」
大きな魚は、池のふかいところへ向かう小助に自分の声でことばをつたえようとしています。小助のほうも、あまり見たことのないお魚がどんなものなのかきょうみをもっています。
「わしは、ナマズというお魚じゃ」
「ナマズ?」
「ぼうやは、わしをあまり見たことがないのかな?」
小助は、山おくの池や川でもぐった時にナマズを見たことがありません。この池をすみかとするナマズは、ほかのお魚とくらべてとてもでっかく見えます。
「どうじゃ、わしにまたがって池の中をたんけんするのはどうかな?」
「いっちょ(いっしょ)に行きたい! いっちょに行きたい!」
ナマズからのさそいをうけて、小助も大よろこびであいてのせなかにのることにしました。小助は、ナマズにまたがりながら大きな池の一番ふかいばしょへもぐって行くことになりました。
「ぼうや、この池がどうやってできたか分かるかな?」
「う~ん……。分かんな~い」
「わしもくわしくは知らないけど、大むかしにこの山のふん火でものすごくふかくて大きなあながぽっかりとあいたのじゃ」
「わあ~っ! ちゅごい(すごい)! ちゅごい!」
小助は、ナマズが言っていることを聞きながらかわいいえがおを見せています。ナマズは、この池のふしぎなことを小助に教えようと話をつづけています。
「ふん火によってできた大きなあなに大雨が長い間ふりつづいたおかげで、こんなにふかい池ができたのじゃ」
「おちゃかな! おちゃかな!」
「はっはっは! この池があるから、お魚もたくさんおよぐことができるのじゃ」
そうするうちに、小助をのせたナマズは大きな池の一番ふかいところへたどり着きました。よく見ると、ふかくないところにいたほかのお魚はここにはいません。
「わしがここで生きるためには、ほかの魚を食べないといけないのじゃ」
「おちゃかな?」
「ほらほら、ぼうやだってお魚を食べることがあるんじゃないかな?」
「うん! おちゃかな大ちゅき(大すき)! おちゃかな大ちゅき!」
「ぼうやみたいにお魚をちゃんと食べてくれるのが、わしにとってうれしいものじゃ」
ナマズは、のこさずに何でも食べることの大切さを小助にやさしくつたえようとしています。 でも、ナマズとの楽しい思い出もそろそろ終わりです。
「ぼうや、そろそろ池から上がるとするかな」
「いつもいっちょ! いつもいっちょ!」
小助は、ナマズといっしょにまだあそびたがっているようです。このようすに、ナマズは小助にことばをかけることにしました。
「ぼうや、こんどきたらまたあそんであげるからね」
「本当に?」
「ああ、本当だとも。だから、今日はもう池から上がろうね」
ナマズは、水中のふかいところからサルやトビがまっている池の入り口まで小助をのせて行くことにしました。
 




