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小助くんの小さなぼうけん  作者: ケンタシノリ
夏は大ぼうけんのきせつ
200/343

カニさんになり切った小助くん

 小助とワン太は、大きなウミガメのせなかにのりながら海の中から上がってきました。すなはまのほうをながめると、さざなみのやさしい音にさそわれるようにめずらしい生きものが歩いています。


「あれなあに? あれなあに?」

「これは、カニという生きものじゃ。カニがどのような歩きかたをしているのかよく見てごらん」


 大きなウミガメは、生きもののあらゆることにくわしいものしりです。小助はワン太といっしょにウミガメからおりると、カニがつぎつぎと歩いているようすをじっと見つめています。


「カニさん、よこ歩きだ! よこ歩きだ!」

「ぼうや、よく分かったね。それじゃあ、カニの手がどんな形をしているのかな?」

「でっかい! でっかい!」

「カニの手はもちろんでっかいけど、はさみのようにあけたりとじたりすることができるぞ」

「チョッキン! チョッキン! チョッキン!」

「そうじゃ、カニはりょう手のはさみをつかってすなはまにある貝やミミズをはさんで食べるのじゃ」


 小助は、カニになり切ろうとりょう手を2本ゆびにして自分の顔と同じ高さまで上げています。そのようすを、大きなウミガメはやさしい目つきで見まもっています。


「ぼうや、こんどはカニになりたいんだね」

「うん!」


 ウミガメやワン太が見ている中、小助はよこ歩きしながらカニたちのまねごとをしています。


「チョッキン! チョッキン!」


 小助は、カニになり切ってすなはまでのよこ歩きをつづけています。これに気づいたカニたちは、小助の歩くようすをふしぎそうにながめています。


「ねえねえ、人間のぼうやがどうしてカニのまねをするの?」

「カニさんになりたい! カニさんになりたい!」


 カニたちは、自分たちになり切っている小助をなかまとしていっしょによこ歩きすることにしました。


「カニカニチョッキン! カニチョッキン!」


 小助は、なかまのカニたちと楽しそうに歌いながらよこ歩きしています。よこ歩きしている間も、小助はりょう手の2本ゆびでカニばさみのまねをしています。


「わあ~っ! 歌うのがすきなの?」

「大ちゅき(大すき)! 大ちゅき!」


 こうして、カニたちは小助といっしょによこ歩きをしながら歌いはじめました。小助のほうも、元気よく歌おうと大きな声を出しています。


「チョッキン! チョッキン! カニチョッキン!」


 大きなウミガメは、すなはまでカニたちとよこ歩きをする小助のすがたを自分の目で見つめています。どんな生きものであっても友だちになりたいという小助の気もちは、ウミガメのほうにもつたわっています。


「ぼうやは、この海としまのことがすっかり気に入っているみたいだね」


 このしまがすっかり気に入った小助ですが、太ようが西へしずむ前にワン太とともに山おくへもどらなければなりません。


「小助くん! ワン太くん! そろそろもどらないといけないぞ」


 小助は、空からやってきたトビからのよびかけに顔をふり向きました。でも、友だちになったばかりのウミガメやカニと小助はわかれたくありません。


 そんな時、大きなウミガメとカニたちが小助とワン太に何かをつたえようと口をひらきました。


「ぼうやたち、ここへはまたくることができるから」

「こんどきたら、またいっしょにカニ歩きしようね!」


 ウミガメやカニの思う気もちをきいて、小助たちはトビのせなかにまたがることにしました。小助は、おせわになったウミガメやカニたちに手をふっています。


「またあちょぼう(またあちょぼう)! またあちょぼう!」


 すなはまの生きものたちとおわかれすると、小助とワン太はトビにのって空へ向かってとび立ちました。トビは、山おくのほうへつばさを広げながらすすんでいます。


「ピ~ヒョロヒョロ、ピ~ヒョロヒョロ」

「小助くんは、鳴き声をまねしたりするのが上手だね」

「うん!」


 小助のかわいい鳴き声は、トビの耳元にもやさしくつたわっています。山おくへ向かってとびつづける中、夕やけの広がる空には小助たちのにぎやかな声がひびきわたっています。

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