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小助くんの小さなぼうけん  作者: ケンタシノリ
夏は大ぼうけんのきせつ
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小助くんとワン太くんと大きな鳥

 小助は、今日も子犬のワン太といっしょに森の中であそぼうとかけ足で走っています。森の中は、これからはじまる大ぼうけんへの入口でもあります。


 いつもだったらほかのどうぶつたちがいますが、今日は1ぴきもそのすがたが見えません。


「こちゅけくん(小助くん)、どこにもいないよ」


 ワン太は、いつもあそんでくれるちびっこオオカミがいないのでざんねんそうにまわりを見回しています。


 そんな中、小助は大きなつばさを広げた大きな鳥が空をとんでいるのをじっとながめています。その鳥は、いくつもの雲がうかぶ大空を鳴き声を上げながらくるくると回っています。


「ピ~ヒョロヒョロヒョロ、ピ~ヒョロヒョロヒョロ」


 小助は、大きな鳥がどこへとんで行くのか見ようと草木をかき分けています。ワン太も、小助の後をおうようについて行きます。


 川のあるばしょへ出ると、小助は大きな鳥が大きな池のほうへ向かっていることに気づきました。


「どこまで行くの?」

「あっち! あっち!」


 小助たちは、大きな岩だらけで足元がわるい道をあるきながらすすんでいます。行き先をたおれた木でさえぎっていても、小助はワン太をだきかかえながら自分の足でのりこえて行きます。


 そこからさらにすすむと、たきの見える大きな池の後ろにさっきの鳥が止まっているのを目にしました。小助たちは、その鳥に声をかけようとゆっくりあるきながら近づきました。


 池のおくのほうにある岩場には、大きな鳥がはねをとじたままでじっとしています。小助は、さっそく鳴き声のまねをしようとかわいい声で歌いはじめました。


「ピ~ヒョロ、ピ~ヒョロヒョロ、ピ~ヒョロヒョロ」


 すると、岩場にいる鳥は子どもの歌声を耳にしながら何か言おうと口をひらきました。そのすがたは、やさしいお母さんのようなふんいきにつつまれています。


「ぼうや、どうしたの?」

「ねえねえ、いっちょに(いっしょに)歌おう! いっちょに歌おう!」

「もしかして、さっきの鳴き声はぼうやなのかな?」

「うん!」


 小助は、大きな鳥になり切って鳴き声を上げようとしています。ワン太も、ワンワンとほえながら小助といっしょに歌っています。


「ピ~ヒョロ、ピ~ヒョロ、ピ~ヒョロヒョロ」

「ワンワン、ワンワンワンッ」

「上手に鳴き声を出しているわね。ぼうやたちの名前は?」

「小助! 小助! 小助!」

「ぼくはワン太。こちゅけくんが名前をつけてくれたよ」


 子どもたちの名前を聞くと、大きな鳥は自分がどんな鳥なのかしつもんすることにしました。


「それじゃあ、わたしの鳥の名前は何かな?」

「う~ん……」


 小助たちは、鳥が空をとんでいるのはこの目で見ているのでよく知っています。しかし、じっさいに鳥の名前を知っているのはごくわずかにすぎません。


「わたしはトビという名前の鳥なの」

「トビ?」

「ふふふ、はじめて聞く名前だものね。わたしの鳴き声といっしょに名前をおぼえてみたらどうかな?」

「ピ~ヒョロヒョロ、ピ~ヒョロヒョロヒョロ」

「小助くん、鳴き声が上手だね。この鳥の名前は?」

「トビ! トビ! トビ!」

「よくおぼえたね。ついでに、小助くんとワン太くんにはこれも教えてあげるね」


 トビは、小助たちの前で2つのつばさを広げました。小助たちは、つばさを広げるだけで大きく見えるトビのすがたにびっくりしています。


「わあ~っ! ちゅごい(すごい)! ちゅごい!」

「この大きなはねを広げると、遠いところまでとんで行くことができるよ」

「あっちなの? あっちなの?」

「ここからはるかに遠い海の見えるところだよ」


 小助とワン太は、トビからはじめて聞くことばがどうしても気になってしまいます。なぜなら、小助たちは今まで海というものを見たことがありません。


 そんな小助たちのようすに、トビはやさしく声をかけようと口をあけました。


「それなら、いっしょにのって行ってみるかな?」

「海が見たい! 海が見たい!」


 トビは、小助とワン太のために山の中ではあじわうことのできない広い海へつれて行くことにしました。

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