山べえとうさぎたちと雪の中で大さわぎ
小助とワン太は、じめんにつもっている雪の上をふむようにすすんでいます。うさぎたちを見つけようと、小助たちは山べえのいるほらあなを目ざしています。
そんな時、遠くでドシンという音が地ひびきのように聞こえてきました。その地ひびきにつられるように、木につもっていた雪が小助の上におちてきました。
ワン太は、いっしゅんで雪の中にうもれてしまった小助をしんぱいしています。しかし、こんなことでくじける小助ではありません。
「わ～い！ 雪だ！ 雪だ！ 雪だ！」
「こちゅけくん（小助くん）、大じょうぶ？」
「キャッキャッ、キャッキャッキャッ」
雪の中から出てきた小助は、あいかわらずのえがおで元気いっぱいです。このすがたを見て、ワン太も小助のまわりをうれしそうに走り回っています。
小助たちが目の先を見わたすと、雪の上をかけぬける小さいどうぶつのすがたがあります。それを、大男の山べえがひっしになっておいかけています。
これにつられるように、小助は山べえにならんで雪の上を前へすすんでいます。
「うちゃぎ（うさぎ）！ うちゃぎ！」
「うわっ！ いきなり出てきたらびっくりするだろ！」
「てへへ、ごめんごめん」
山べえは、いきなりあらわれた小助にあきれたようすで見ています。そんな中にあっても、小助は気にすることなくうさぎに向かっていきます。
「小助くん、ここまでおいで」
「うちゃぎ！ うちゃぎ！ うちゃぎ！」
すばしっこいうさぎは、二手に分かれて白い雪をかけ回っています。どうくつのまわりに広がる雪の上には、うさぎの足あとがたくさんあります。
そこで、ワン太はうさぎをつかまえようと先回りすることにしました。うさぎたちは、目の前のワン太に気づくとあわてて引きかえそうとします。
「わっ！ 見つかっちゃった」
うさぎたちが後ろをふり向くと、小助が雪の上をかき分けながら自分たちにせまってきました。これには、さすがのうさぎたちもまいってしまったようです。
「うちゃぎ！ うちゃぎ！」
「あ～あ、つかまっちゃった」
そのころ、山べえはうさぎたちにおいつこうとひっしになっています。けれども、山べえはあれだけ体が大きいのに、前にいるうさぎたちにおいつくことができません。
「どうしておいつけないのかなあ」
「こっちだよ、こっちだよ」
「うぐぐぐぐっ……。おれをばかにしやがって！」
そんなうさぎたち目の先には、小助たちのすがたがあらわれました。あわてて後ろへひきかえしたうさぎたちは、自分たちよりはるかにでかい山べえのりょう足の間をつぎつぎとすりぬけていきました。
「あっ！ ちょっと……。わ、わわわわわっ！」
山べえは、うさぎたちをおいかけようとふり向こうとした時に足がもつれてしまいました。そして、そのまませなかからドシンと音を立てるようにたおれてしまいました。
「どうしてこうなるのかなあ……」
山べえは、だれよりもでっかい大男なのに１ぴきもつかまえることができません。そんな山へえがたおれたままで目をふり向くと、そこには小助とワン太がかわいいえがおで立っているのが見えました。
「いつもいっちょ（いっしょ）！ いつもいっちょ！」
小助は山べえの体の上にのると、そのまま上を見上げながらあお向けにねころがりました。これでは、山べえが雪のつもったその場からおき上がることができません。
「おいおい！ これじゃあおき上がれないだろ！」
山べえが顔を上げて大声でさけんでも、小助はあんよを上げるだけであいかわらずねころがったままです。
そんな小助に、山べえがもういちど大きな声でよびかけようとしたその時のことです。
「ジョパジョパジョジョジョジョ、ジョジョジョジョジョジョ～ッ」
「わっ！ おれの顔におしっこが……」
「おちっこ（おしっこ）！ おちっこ！」
小助はあんよを上げながら、山べえの顔を目がけて元気いっぱいのおしっこをいきおいよくめいちゅうさせています。いきなりのおしっここうげきに、山べえはどうすることもできません。
「たのむから、もうかんべんしてくれよ……」
「キャッキャッ、キャッキャッキャッ」
まわりにいるうさぎたちとワン太は、山べえがおしっこをかけられるようすにえがおでわらい声を上げています。小助のほうも、かわいい顔を見せながらうれしそうにわらっています。
