冬ごもり前の小助くんとクマの親子
森の中では、秋がおわる前にかならず行うしごとがあります。それは、じめんにおちているいろいろな木のみをあつめることです。
どうぶつたちの多くは、冬ごもりに入るためのじゅんびをしています。大きな木のあなからは、リスが顔を出してきました。
「わあ~っ! どんぐりやくるみがいっぱいおちているぞ!」
あなからとび出したリスは、木をのぼったりおりたりしながら木のみをつぎつぎと自分のすみかへはこんでいます。雪がふりつもる冬の間、どんぐりやくるみは木のあなですごすリスにとって大切な食べものです。
そして、冬ごもりをするために木のみをあつめるどうぶつはほかにもいます。子グマたちは、大きな木のまわりにおちているどんぐりやくるみをひろっています。
「ふふふ、いっぱいあつめているわね」
お母さんグマは、子グマがあつめた木のみをりょう手でうけとると自分たちがくらすほらあなのところへもっていきました。ここなら、冬の間も食べものにこまることはありません。
この後も、クマのお母さんは子グマたちからわたした食べものをせっせとほらあなのほうへはこんでいます。このようすに、森の中へやってきた小助はすぐにお母さんグマのいるところへ行きました。
「かあちゃ、手ちゅだい(手つだい)! 手ちゅだい!」
「それじゃあ、どんぐりとくるみがいっぱいおちているからあつめてきてね」
「うん!」
小助は、子グマたちがいるところでいっしょに木のみをひろうことにしました。かわいいどんぐりのみは、小助の小さい手の中につぎつぎと入っていきます。
「わ~い! どんぐり! どんぐり!」
どんぐりをあつめると、小助はかけ足でお母さんグマのいるほらあなのそばへやってきました。そぐ後ろには、同じようにどんぐりをあつめた子グマたちのすがたがあります。
お母さんグマは、小助たちからうけとったどんぐりをほらあなのおくのところへおきました。そこには、どんぐりやくるみといった木のみが山のようにつみ上げられています。
大きな木のまわりでは、小助たちが木のみをさらにあつめようといっしょうけんめいになっています。
「ねえねえ、これなあに?」
「これは、くるみっていう木のみだよ。どんぐりと同じように、ぼくたちが冬をすごす時に食べるものだよ」
「くるみ! くるみ!」
小助は、子グマたちがひろうのを見ながら自分の手でくるみを手でつかんでいます。りょう手いっぱいにつかむと、さっきと同じようにお母さんグマがいるところへもっていきます。
「ぼうや、手つだってくれてありがとうね」
こうして、クマの親子がくらすほらあなには春をむかえるまでの間の食べものがいっぱいあつまりました。外へ出ると、うすい雲におおわれた空のほうから小雪がふってきました。
「しばらくの間は、ぼうやと顔を合わせることができないわ」
雪がつもる冬は、クマの親子に会うことができないことを小助は知っています。それでも、小助はさびしがるそぶりを見せることはありません。
「春になったら、いっしょにあそぼうね」
「うん!」
小助は、子グマたちと手をにぎってあくしゅをしています。あくしゅは、小助と子グマたちにとって友だちであるしるしです。
そして、小助は子グマたちといっしょにいつものおねだりをしようとお母さんグマの前へやってきました。
「かあちゃ、おっぱい! おっぱい!」
「ふふふ、しょうがないわね。さあ、こっちへおいで」
お母さんグマは、小助たちにおっぱいをあたえることにしました。春になるまでおわかれするとあって、小助はクマのお母さんにあまえようとおっぱいをたくさんのみつづけています。
「ぼうや、冬の間もずっと元気だといいね」
小助のかわいい顔つきに、お母さんグマはやさしいことばをかけながら見つめています。




