小助くんとこん虫たちのせかい(その1)
森の中では、小助が子グマたちやワン太とともにすやすやとねころがっています。どうやら、元気いっぱいにあそんだのでつかれてしまったようです。
夏の暑い中にあっても、子どもたちはすずしい木かげのおかげでぐっすりねむっています。小助も、かわいい顔つきで楽しそうなゆめを見ながらねむっています。
「う、う~ん……」
おひるねをおえて目をさました小助ですが、まわりをきょろきょろすると今まで見たことのないけしきにとまどっています。
どこまであるいても、小助の目に見えるのは自分よりもはるかに高いところまでのびている草らしきものばかりです。けれども、小助にとっては何もかもがはじめて見るものばかりとあって大はしゃぎしています。
しばらくすると、さっきまでおひるねをしていたワン太と子グマたちが小助のところへやってきました。どうぶつたちも、まわりのけしきが今までとちがうことに気づいているようすです。
みんながふしぎなばしょにまよいこんだ中、小助は向こうのほうをじっとながめています。
「ねえねえ、あっち! あっち!」
「小助くん、どうしたの?」
「てんとうむち(てんとう虫)! てんとうむち!」
小助が見ているもの、それは草のてっぺんにいるてんとう虫です。そのてんとう虫は、せなかの赤いところに黒い点々があります。
子グマたちは、自分たちよりも高いところにいるてんとう虫の大きさが気になっています。なぜなら、ふだん見るときのてんとう虫とくらべてかなりでっかいからです。
「てんとう虫、こんなにでっかかったかなあ」
「ぼくたちの手にのせたら、てんとう虫はゆび先まで歩いていくんだもん」
そんな子グマたちをよそに、小助はてんとう虫に向かってかわいい声をかけました。
「いっちょにあちょぼう(いっしょにあそぼう)! いっちょにあちょぼう!」
すると、小助の声にさそわれるように大きなてんとう虫がとんできました。思っていたよりも大きいてんとう虫のすがたに、おどろいたどうぶつたちは思わずしりもちをついてしまいました。
てんとう虫は、小助の目の前にある草に止まっています。小助は、かわいいてんとう虫のせなかを見ようとその場からはなれようとはしません。
「ぼうや、おいらを見たってあそんだりなんかできないぞ」
「ねえねえ、とんで! とんで!」
「しょうがねえなあ。おいらがとぶのをよく見ておくんだぞ」
小助たちの前で、てんとう虫は自分のはねを広げてとんでいます。てんとう虫がいろんなところへとべるのも、このはねがあるおかげです。
「わあ~っ! ちゅごい(すごい)! ちゅごい!」
てんとう虫のとび回るようすに、小助はかわいいえがおで大よろこびしています。どうぶつたちも、草のてっぺんへとんで行くてんとう虫をこの目で見ようとしています。
でも、てんとう虫はそろそろほかのところへいかないといけないので、小助たちとはおわかれしなければなりません。
「ここには、おいらのほかにもいろんなこん虫がいるから見ておいたほうがいいぞ。かぶと虫やくわがた虫みたいに強いこん虫もいるからな」
「ねえねえ、ちゅよいの(強いの)? ちゅよいの?」
「かぶと虫もくわがた虫も、自分たちどうしでたたかうからすごいぞ!」
強いこん虫がいることを知って、小助は足をピョンピョンとびはねながらよろこんでいます。小助は、かぶと虫やくわがた虫との力くらべをしたくてたまらないようすです。




